戦後、わが国の女性の高等教育を担って来た短期大学の数は、1990年代半ばには約600あった。しかし、その後、短大の数は減少し続け、現在はピーク時の6割未満となっている。廃止された短大の多くは四年制大学に改組されたため、(短大の減少とは対照的に)四年制大学の入学定員数は増加した。既存の研究では、地域における大学の開設は高等教育拡大の操作変数(IV)として用いられることが多いが、最も単純な人的資本理論ですら、短大の四大化と(四大への)入学者数の増加との間に一意的な連関を予測するわけではない。本研究では、上記のような高等教育供給の大規模な変化が、女性の大学進学の意思決定にどのような影響を持ったのか分析した。「消費生活に関するパネル調査」に基づいた分析の結果、地域における短期大学の入学定員数の減少は、女性の短期大学への入学確率の低下をもたらしたが、他方で、地域における四年制大学の入学定員数の増加は女性の四年制大学への入学確率を有意に引き上げることはなかったことが明らかになった。このことは、地域の短大が四年制大学に改組されることで、その地域に住む高校生の一部は高等教育機関に進学することをあきらめていたことを示唆する。短大の入学定員が減少することの影響は、私立の短大よりも国公立の短大についてのほうが大きく、都市部よりも地方部で大きいことも明らかになった。ただし、四年制大学への進学確率に対する影響は、「短大の廃止(募集停止)に由来する四大の定員増」と「それ以外の四大の定員増」で違いは無いことも見出された。
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