本研究は、高齢者に焦点を当てて、経済状況が個人の時間選好・リスク選好に与える影響を検証した。米国の個票データ「健康と引退に関する調査」を利用し、無作為に決定するアンケート調査日と年金受給日との間の日数を経済状況の外生的なバリエーションとして利用した。分析の結果、年金受給後のお金がある状態と比べて、年金受給日前のお金が欠乏している状態ではリスク許容度が高まることが観察された。この傾向は、世帯所得に占める年金受給額の割合が大きい世帯や、貯蓄額が少ない世帯で顕著であった。一方、時間選好の有意な変化は観察されなかった。日本の高齢者のデータを使用した場合も同様の結果が得られた。
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