3年目の研究実績は以下の通りである. (1) 資本市場のグローバル化が,各国の財政の持続可能性にどのような影響を与えるのかを分析した論文を国際学会で報告した(International Institute of Public Finance).既存の国債残高が少ない国や,国内資本が相対的に少ない国ほどグローバル化の恩恵が大きく,資本税率を引き下げる余地が大きいことを理論的に示した.論文は査読を終え,European Economic Review に掲載された. (2) 高齢者の経済的役割(労働市場で働くか,家庭内で孫の世話をするか)と,出生率,年金制度の関係を分析した論文を国際学会で報告した(Association for Public Economic Theory).祖父母の育児協力(grandparenting)という家庭内時間移転を考慮しているのが特徴である.主な結論は次の2つである.(i) 年金保険料率を引き上げると,grandparenting が増加する.(ii) 年金の規模の小さい(大きい)国では,高齢者の労働参加率と出生率の間に負(正)の相関がある.論文を財政分野の国際雑誌に投稿し,修正要求にもとづき再投稿の準備を進めている. (3) 資産格差と児童労働の関係を分析した論文を,研究所のディスカッションペーパーとして公表した.資産格差が大きい国ほど,条件つき給付(conditional cash transfers)が政治的に支持されやすく,児童労働が減ることを理論的に示した.論文を国際雑誌に投稿し,査読の結果待ちである. (4) 財政学のテキストを公刊した(南山大学の焼田党教授との共著).
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