研究課題/領域番号 |
17K03790
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
上村 敏之 関西学院大学, 経済学部, 教授 (00328642)
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研究分担者 |
金田 陸幸 尾道市立大学, 経済情報学部, 准教授 (50782083)
足立 泰美 甲南大学, 経済学部, 教授 (80734673)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 税 / 社会保障 / エージェントベースドモデル / マイクロシミュレーション |
研究実績の概要 |
当初の研究実施計画の通り、令和2年度は、さらに進んだ本格的な分析を行うことができた。第一に、エージェントベースドモデルについては、令和元年度までに人口・世帯数のシミュレーションを実施できるモデルを構築していたが、令和2年度は学歴と年齢による賃金関数を導入することにより、エージェント(個人)の所得や就業状態をモデル化できた。所得のモデル化によって、世代間・世代内の個人および世帯の所得格差を分析できるだけでなく、今後に公的年金制度や税制をモデル化し、制度分析を行うことができる基礎的なモデルへ移行できる目処が立ったことになる。したがって、本研究の当初の目的である、税・社会保障制度を分析可能なエージェントベースドモデルの開発については、着々と成果を上げることができていると考えられる。なお、就業状態と所得の将来推計については、令和2年度の生活経済学会(オンライン)にて報告した。この報告では、同一世代内の所得格差に着目し、日本では高齢化に加えて所得格差の拡大が同時に進展することを指摘し、政策的な対応が不可欠であることを指摘した。第二に、マイクロシミュレーションについても、近年の所得税の税制改正による所得再分配効果について分析を行うことができた。マイクロシミュレーションについて、分析手法としてほぼ確立することができたことは、本研究のもうひとつの成果である。令和2年度の本研究の実績は、雑誌論文の数は4本、学会報告は5回となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、エージェントベースドモデルによる本格的な分析として、令和元年度で残された課題であった所得と就業状態のモデル化に成功した。最終的な目的は税・社会保障制度のシミュレーション分析であることから、今後はこれらの制度のモデル化に取り組む必要があるが、当初の研究実施計画の通りにおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画の通り、令和3年度においては、エージェントベースドモデルに税・社会保障制度の導入を試みる。そのためには、個人のエージェントを世帯(家族)として認識し、世帯所得を確定することと、世帯主の特定化、さらには税制や社会保障制度にある世帯主扶養者の所得のモデル上の認識といった、テクニカルな問題をクリアしなければならない。現時点で、必要な作業に関する課題はリストアップしており、今後の研究においては、それらの課題を解決していくことになる。なお、引き続きコロナ禍にあるが、本研究の研究代表者と研究分担者は、定期的にオンラインで打ち合わせを行うことで、今後の研究をどのように進めるかについて、常に議論をしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により、対面で実施しようとした打ち合わせの予定変更が頻繁に生じたことで、次年度使用が生じた。今後は、可能な限り研究計画が進むよう努めたい。次年度使用額については、新型コロナウイルス感染症が落ち着いた頃を見計らって、対面での打ち合わせを行うための旅費として活用したい。
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