研究課題/領域番号 |
17K03795
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
安藤 道人 立教大学, 経済学部, 准教授 (10749162)
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研究分担者 |
宮崎 雅人 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (20553069)
古市 将人 帝京大学, 経済学部, 准教授 (50611521)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 計量地方財政史 / 計量経済史 / 財政調整制度 / 疑似実験 / 統計的因果推論 |
研究実績の概要 |
研究計画における当初の「研究目的」は以下の通りであった。(1)明治維新以後の都道府県長期パネルデータの収集・整理・公開(ベース作業)、(2)都道府県・市町村財政の歴史的動態およびその都道府県格差の記述統計分析(サブテーマ)、(3)都道府県・市町村財政の都道府県格差の長期的要因分解(サブテーマ)、(4)政府間財政移転の制度導入が財政的・社会的アウトカムに与えた影響の推定(メインテーマ)。 このうち、(1)については、1年目から引き続き、2年目においては戦前および戦後の都道府県・市町村地方財政の都道府県レベルのパネルデータの構築を進めた。後述するように、大正・昭和期(1910-1930年代)の地方財政データにおいて計画よりも収集が遅れ、費用も想定以上となっているものの、計画した地方財政パネルデータの収集のメドは立ちつつある。 具体的には、上述した大正・昭和期以外では、明治期地方財政パネルデータはほぼ完成した。また戦後についても、戦後初期(1950年代から60年代初頭)にかけては予算執行の関係上、PDFデータの収集で待機中であるものの、それ以降の歳出データについては1970年代までの電子化が終了しており、それ以降のe-Statとの接続も完了している。 (2)(3)については、データ収集がほぼ終了した明治期の地方財政データについては論文化を進めており、学会・研究会で計2回のフルペーパーの報告を行った。また、大正期・戦前昭和期の分析の論文化を進めた。 (4)については地方財政パネルデータの完成後に分析を開始する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目から引き続き、2年目においては戦前および戦後の都道府県・市町村地方財政の都道府県レベルのパネルデータの構築を進めるとともに、データの構築が終了した明治期については論文執筆および学会・研究会報告を行った。 パネルデータ構築においては、戦前・戦後を同時進行でデータ整理を進めている。本来の予定では、2年目時点ではデータ構築は終了して各種分析に着手している計画であったが、とりわけ戦前の大正・昭和期(1910-1930年代)の地方財政データにおいては、原票における統計の細分化・複雑化が生じており、当初の見込みよりも作業に時間がかかっており、かつ予算も当初よりもかなり多く必要となる見込みである。具体的には、この時期は「内務省統計報告」の地方財政の決算統計を用いる予定だが、それ以前・以後と接続性のあるパネルデータを作成するためには、細分化された項目を再集計する必要があることが判明した。従って、入力項目が当初予定の倍以上の分量に上っているため、やや遅れている。 また戦後地方財政データについては大部分のデータ収集はpdfレベルで終了しているが、戦後初期の一部のデータについては、予算上の関係で、戦前地方財政データの終了のメドがついてから着手する予定である。 一方で、明治期の地方財政データについては一通りのデータ構築が終了しており、現在は論文作成を進めており、フルペーパーに基づく学会報告も行っている。また、大正期・戦前昭和期についての論文作成にも着手を始めている。 本研究の最終的な目的である財政調整制度導入効果の分析については、戦前・戦後を通じたパネルデータが一通りそろわないと実施できないため、研究が遅れている。しかし、データがそろい次第すみやかに分析実施・論文執筆ができる体制はできている。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、現在ほぼ完成している明治期地方財政の研究については、2019年度前半中に日本語論文としてワーキングペーパーとして公表し、投稿予定である。第二に、同様の内容を大正期・戦前昭和期についても2019年度中に論文を完成させ、公開・投稿する予定である。 第三に、計画よりも遅れているものの、2019年度前半には地方財政データが全体として完成する予定であるため、これを利用した通史的な地方財政の動態的分析や、政府間財政移転の制度導入の財政的インパクトを分析した論文の執筆を、2019年度後半から開始する。 全体として、本科研の予算のみで当初計画した研究論文のうち、「政府間財政移転の制度導入が社会的(非財政的)アウトカムに与えた影響の推定」の研究を実現することは費用的に困難であるが、それ以外は論文化が可能な見通しである。具体的には、1.明治期地方財政の日本語論文、2.大正期・戦前期地方財政の日本語論文、3.戦前・戦後を合わせた通史的な地方財政の動態分析の英語論文、4.「政府間財政移転の制度導入が財政的アウトカムに与えた影響の推定」の英語論文の計4本の論文を執筆する予定である。 また予算的に困難となった、社会的(非財政的)アウトカムのパネルデータ構築・分析については、他の関連科研費プロジェクトとのリンケージや今後の新しい外部資金獲得を利用して、予定通り実現する予定である。 最後に、データのインターネット公開についても、これらの論文をワーキングペーパーとして公開する時点ですみやかに実施し、多くの研究者に利用してもらうべく、周知や広報に努める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
既述のとおり、戦前の大正・昭和期(1910-1930年代)の地方財政データにおいては、原票における統計の細分化・複雑化が生じており、当初の見込みよりも作業に時間がかかっており、かつ予算も当初よりもかなり多く必要となる見込みである。 具体的には、この時期は内務省統計報告を用いる予定だが、接続性のあるパネルデータを作成するためには、細分化された項目を再集計する必要があるため、入力項目が当初予定の倍以上の分量に上っている。 そのため、年度をまたいで、最終年度予算と合わせて予算執行を検討することとした。
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