財サービスの同時点間代替性(Intratemporal elasticity of substitution)に着目し家計レベルでの日本人の消費行動と実質為替レート(相対価格)の中長期的関係を明確にすることが本研究の目的である。為替レートや相対価格は需要により変化するため、消費者行動は重要な実質為替レートの変動要因であると考えられている。しかし、消費パターンに関するデータはマクロとミクロレベルで豊富に存在するが、国際金融の分野ではマクロデータに基づく財サービスの代替性を主に分析している。本研究は詳細な国内消費情報を収集した全国消費実態調査を用いて、ミクロレベルの個人消費や代替性を推定する分析を行った結果、家計の消費行動は価格よりも世帯主の年齢、性別、家族構成など社会的変数が大きな影響を与えていることを報告している。研究論文はDiscussion Paperとして開示されており、最新版の論文は現在学術雑誌に投稿中である。 また、補完的なテーマとして、サービスの代わりに自宅選択に関する家計の意思決定についてもミクロデータを用いて分析した。サービス消費の分析と類似して、社会的変数の影響が大きいということや、居住地や家計の財政状況の他に、特にライフサイクルにおける住み替においては世帯主が女性の方が男性よりも早期に決定を下していることを報告している。この論文は不動産分野の学術雑誌として世界的に有名な Journal of Real Estate Finance and Economicsに掲載が決定している。経済学では価格が消費決定に非常に大きな影響を与えていると一般的に考えられているが、上記二つの論文は実は価格はそれ程重要でないことを実証している。
|