研究課題/領域番号 |
17K03797
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
西出 勝正 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (40410683)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 金融市場の情報構造 / マーケットマイクロストラクチャー |
研究実績の概要 |
昨年度までの先行研究調査やモデル拡張の可能性考察を踏まえて今年度は以下の2点を主として進めてきた. 第1点目はSarkar (1995)やLiu and Wang (2016)の市場モデルに対して,情報伝達を通じた各経済主体の信念の異質性を明示的に導入するという理論研究である.こちらについては共同研究者とも協議し,取引制約における2つの市場制度であるマーケット・メーカー制度と競争売買(オークション)制度の違いに着目して議論することで学術的新規性を示すことを目指した.最終的に,マーケット・メーカーの自己勘定取引(proprietary trading)が取引参加者の構成や市場流動性を向上させるという重要な示唆を得ることができた.当該研究については既に査読付き論文雑誌に投稿済みである(査読中). 第2点目は,Foucault et al. (2016)などのモデルを拡張し,取引頻度の制約に格差がある投資家が混在するとの設定を置く理論研究である.但し,連続時点モデルを採用しているFoucault et al. (2016)では低頻度取引業者に対する高頻度取引業者の優位性の度合いをモデル上明示的に導入することができないので,共同研究者と協議した結果,離散モデルを用いた分析を進めることで同意した.既に基本部分のモデル構築は完了しているものの,均衡導出のための数値計算手法や実証分析における結果との関連性について更に調査と考察が必要であることが判明した. 何れの研究も本研究課題の主要テーマである情報技術という観点から見て学術的新規性を提示できる有力な理論研究であり,研究期間終了時点である来年3月までには論文として完成させて査読付き雑誌への掲載を目指したい.尚,副次的研究として進めてきたリスク管理に関する論文が査読付き雑誌に採択され掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」にて記載の通り,初年度に検討するとした新規モデルの構築と更なる拡張の具体化が図れたことから研究は順調に遂行している.また,今年度はリスク管理に関する研究について査読付き論文雑誌に採択された.この研究は高度技術の導入が叫ばれて久しい金融リスクの管理に新たな示唆を与えるものであり,広い意味で研究テーマに寄与している. 以上の理由から,研究課題の進捗は問題ないものと思料する.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である次年度は,(1)査読付き雑誌に投稿済みの研究については採択を,(2)理論構築が終わった研究については最終的な調査や検討を終えて論文を完成させ雑誌に投稿を目指す.併せて,学会での研究報告や斯分野の研究者との交流を通じて意見交換し,更なる精緻化と改善に努めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
データ購入に他の研究費を使用するなど、資金使用の効率化に努めたため.但し,繰越額は誤差の範囲内であり特に問題ない. 今年度は研究期間の最終年度として,(1)論文の精緻化のための学会報告(2)必要に応じて数値計算を実施するための物品購入,などに充当していく予定である.
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