研究課題/領域番号 |
17K03801
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
久保 英也 滋賀大学, 経済学部, 教授 (10362815)
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研究分担者 |
菊池 健太郎 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (60738368)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 琵琶湖の全循環停止 / CATボンド / デリィバティブ / リスクファイナンス / 関西広域連合 / 閾値 |
研究実績の概要 |
(1)琵琶湖流域水物質循環モデル(モデルB)とオプション料の計算(全循環停止確率を求める)を行う金融確率モデルとの接合を可能とするモデル(閾値抽出モデル)を開発し、大型のモデルBにおいても、5万本のモンテカルロシミュレーションが実質的に行える原理を確立することができた。 (2)このオプションモデルの結果を、ディバティブやCATボンドの形に整え、金融市場にアクセスため、実務家として、従来の三井住友海上からより実績のある東京海上日動にパートナーを変更した。既に2018年度に3回の会議を終えた。これに伴い、海外の市場につなぐ保険ブローカーもマーシュ社からエーオン社に変更した。エーオン社からは、既にこのボンドを引き受ける海外の投資家はあるとの感触を得ている。また、発行額からみて発行コストの関係から、CATボンドより、デリィバティブとして整理した方が良いとの意見をもらっており、関西広域連合と調整をしている。 (3)関西広域連合における資金調達に向けた準備は、同連合の正式委員会である「琵琶湖淀川流域対策に係る研究会」のファイナンス部会を通じて、保険料の徴収方法や対象者などについて詰めている。2回の会合を終えている。 (4)学術成果報告については、日本リスク研究学会年次大会(福島大会)で研究発表を行い、同学会の大会予稿集に投稿した上に、査読誌である「日本リスク研究学会誌」に投稿済み(2018年11月)である。また、保険関係者への環境リスクファイナンスの認知を高めるため、保険学雑誌(査読)にも2019年2月に投稿した。ともに審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モデル開発は順調に進んでおり、学会での研究報告も予定通りである。ただ、本研究は理論研究の社会実装を行うことを目的としており、超えるべきハードルは残っている。最大の課題が、CATボンドもしくはディバティブの発行母体となる予定の関西広域連合の琵琶湖淀川流域対策に係る研究会」での審議が遅れていることである。小生は同研究会のファイナンス部会長を務めているが、関西広域連合の組織の優先課題として、「関西地域の洪水保険(リスクファイナンス)の創設」を急ぐことになったため、こちらの審議日程を先行させているためである。2019年3月にファイナンス部会を開催し、ようやく課題を整理することができたことから、今後進捗が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
①理論モデルの更なる精度の引き上げ、②海外の投資家に受け入れられやすいデリィバティブの設計、③保険の抽出の仕組みづくり、の3点を以下の通り丁寧に進めていきたい。 ①についてはモデルAの精度の向上(より安定的な全循環停止確率の算定)を図るため、現在の5万本のモンテカルロシミュレーションを20万本とし、データセットも直近データを基に再計算する。モデルBについては、閾値を算出する接合モデルを東京大学生産研究所の協力を得ながら更に進めていきたい。 ②については東京海上、エーオンとの実務協議に入る。 ③関西広域連内での意思決定を急ぐため、同連合の事務局長との連携を密にし迅速に進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
外注を予定していたシミュレーションに必要なデータ入力を、学生アルバイトに変更し、その生産性が高く、想定より短い時間でデータ入力が完了したため、予定していた支出金額に達しなかったことが理由。
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