研究課題/領域番号 |
17K03801
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
久保 英也 立教大学, 21世紀社会デザイン研究科, 特任教授 (10362815)
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研究分担者 |
菊池 健太郎 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (60738368)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 環境リスクファイナンス / 琵琶湖の全循環 / 全循環と部分循環 / インデックス型デリィバティブ / 溶存酸素量モデル / モンテカルロシミュレーション |
研究実績の概要 |
最終年度は、まったく想定外であった2018年度の琵琶湖の全循環の一部停止の事態への対応と今まで詰めてきた理論モデルを実現するフィージビリティを詰めることに重点を移した。すなわち、琵琶湖の全循環停止デリバティブを地方自治体が入手できるように、国際保険ブローカーや投資家を納得させるスキームの完成に時間をかけた。それは、(1)オプション料算出モデルの合理性、(2)トリガーの設定の納得感、(3)トリガーの基準となる観測値の妥当性(観測体制と方法)、を高めることである。 (1)と(2)については、観測開始以来、初めて全循環が一部停止した原因を調査する中で、冬季の気温や平均風速に加え、冬季の特別な風のエネルギーが大きな影響を与えることを突き止め、風のエネルギーを日次平均風速の後方移動平均とラグとにより説明するモデルを新たに開発した。この「風の累積エネルギーモデル」と12月の平均気温、冬季の前年との気温差、そして、1月の平均風速で表す全循環の「平均構造インデックスモデル」とのダブルトリガーでデリバティブを構成することとした。 (3)については、琵琶湖環境科学研究センターの観測船に同乗する中で、定期観測の体制と方法は国際基準に適合するとの判断に至った。また、琵琶湖の湖底に酸素を送る設備の投資額試算も行った。 研究期間全体を通して、琵琶湖・淀川流域1400万人に影響する琵琶湖の全循環停止リスクをファイナンス手法により外部移転し、停止時には、琵琶湖湖底に酸素を送り込む設備の購入資金の手当てに目途を立てることができた。これにより、地球温暖化が今後更に進展する中で、自然環境保護対策費の予算制約が厳しい地方自治体においても、琵琶湖・淀川流域の生態系と水質を守る手立てを講ずることが可能になる。また、このスキームは、日本の他の流域やアジア諸国にも観測データさえ整備することができれば、応用できることになる。
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