研究課題/領域番号 |
17K03807
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
葉 聰明 九州大学, 経済学研究院, 教授 (20404858)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 金融リテラシー / 行動経済学 / 行動ファイナンス / バイアス / 損失回避 / 因子分析 |
研究実績の概要 |
「金融リテラシー調査」結果を用い、日本の全国各地から 18~79歳の二万五千人のデータを分析した結果を下のように簡単にまとめた。 1.日本人陣の金融リテラシーの結果と海外のそれと比較した結果、他の先進諸国に比べ、日本人の金融問題に対する正解率が低いことがわかった。また、金融資産での運用の面において海外に比べ、日本人は慎重的な態度をとっていることが観察されている。 2.次の段階の実証研究のために次の金融行動の特徴をまとめた。これらの行動は人々の経済的ウェルビーイング(well-being)に強く関係している。とくに(1)現在の収支や老後のための資金ニーズの把握、計画、および確保、(2)金融商品の購入時の比較行動の有無、(3)金融行動の際のバイアスの程度、についての結果をまとめた。(1)については、老後のための資金ニーズを把握した人は全体の半分で、その準備計画や確保を持っているのは3割しかないことが判明した。(2)については、金融商品の購入時、比較行動をとったのは5~6割にとどまっている。(3)については、回答者の8割は損失回避バイアスを示している。 3.次の段階の実証研究のために金融リテラシーを定量化した。先行研究では2,3問の回答結果だけをもって金融リテラシーを算出したものが多い中、本研究はより精密に回答者の金融リテラシーを測定することができる。すなわち、「金利」「インフレ」「リスク」「支出」「保険」「年金」のそれぞれの分野における回答者の金融リテラシー指数を因子分析を用いて推定した。同じく因子分析で6分野全体の総合指数もさらに計算した。標準化された金融リテラシー総合指数(平均がゼロ)は最小で-2.1で、最高で1.7になっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画実施前の準備が周到にされていることもあり、計画にしたっがて研究を進めることができました。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画のように、今年度の研究内容は「金融リテラシー調査」のデータを使い、日本人の金融リテラシーを決定する要因はなにか、について分析するものである。日本では初めての「金融リテラシー調査」なので、単独年度のデータしかないため、クロスセクション型の統計分析を行う。 実証分析にあたり、従属変数である金融リテラシーは「金融リテラシー調査」における九分野にもわたるリテラシー指標を使う。すでに前年度の研究で、これらの分野の間に相関・重複がある可能性を考慮して、因子分析を用いて金融リテラシー指数を作成した。また、分析結果の頑丈性を確保するため、複数のインデックスを作成した。 一方、説明変数について人間資本理論等の理論に基づいて選択する。例えば人間資本理論の場合、認知能力やインセンティブが説明要因として考えられるが、「金融リテラシー調査」の属性結果より年齢、学歴、職業、投資経験などの情報に基づいた変数を選定する。これらの結果より、金融リテラシーを決定する要因はなにかについて明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
この次年度使用額の金額は、5月開催の学会発表(Taiwan Finance Association)の学会参加費として2017年三月までに支払う予定だったが、学会参加の登録が実際開始されたのは4月になってからなので、この次年度使用額を2018年度で計上することになったしだいである。
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