研究課題/領域番号 |
17K03810
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
齋藤 卓爾 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (60454469)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 企業金融論 / コーポレートガバナンス / 取締役会 |
研究実績の概要 |
本年度は日本企業のコーポレートガバナンスメカニズムの変化がコーポレートガバナンスの効率性に及ぼした影響について分析し、その成果を論文としてまとめた。日本企業のコーポレートガバナンスメカニズムは1990年代以降大きく変化した。取締役会に関しては、かつては内部者のみで構成されていたが、2000年代後半以降、多くの企業が社外取締役を任命するようになった。コーポレートガバナンスの効率性を判断する指標としては経営者交代に注目した。なぜならコーポレートガバナンスが機能していれば、経営者の意思決定の結果として業績が悪化すれば、経営者が責任を問われ交代させられると考えられるからである。本研究では1990年から2013年までの24年間の東証1部上場企業の経営者交代の決定要因を計量的に分析した。分析の結果、一貫して業績が悪化すると経営者が交代するという関係が確認できた。しかしながら、経営者交代が反応する業績指標は利払い前の利益を示すROAから、利払い後の利益を示すROEや株式投資収益率に変化していた。つまり経営者は株主の利害を損なった場合に、交代させられる確率が上昇することになり、より株主の利害を尊重した経営をするインセンティブが生じていたのである。取締役会に関しては、社外取締役の人数により、経営者交代に与える影響は異なっていた。社外取締役の人数が 1 人か 2 人の企業では経営者交代の業績感応度が低い一方で、3 人以上いる企業では経営者交代の業績感応度は高い傾向が見られた。この結果は日本においても社外取締役が業績を悪化させて経営者を交代させる役割を果たしていることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はこれまでに作成したデータベースに基づいてそれをまとめる作業に注力した。その結果として、社外取締役の行動の一端を示すことができた。しかしながら、本研究課題のための社外取締役のインセンティブに関するデータ収集が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず社外取締役のインセンティブに関するデータ収集をすすめていく。具体的には社外取締役の兼任状況や持株に関するデータを役員四季報などから収集していく。収集にあたってはリサーチアシスタントを雇用し、収集の補助をして頂く。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は昨年度までに作成したデータベースに基づき、その成果を論分としてまとめ、投稿し、改訂する作業を行った。当初は本研究課題のデータを収集する予定であったが、上記の理由により、その作業に取りかかれなかった。次年度以降にその作業に取りかかるため、今年度の研究費を次年度以降に使用していく予定である。
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