研究課題
本研究の目的は、日本の企業金融に係る制度変更が企業の資金調達やパフォーマンスに及ぼす影響について、「銀行株式保有制限規制」、「金融円滑化法」を題材として実証分析を行うことである。平成29年度は、「銀行株式保有制限規制」について、執筆済みのワーキングペーパー(鈴木健嗣、植杉威一郎氏との共著)を日本経済学会(青山学院大学)、日本金融学会(鹿児島大学)、Midwest Finance Association(米国San Antonio)にて発表し、討論者からのコメントを踏まえてワーキングペーパーを改訂した。「金融円滑化法」については、執筆済みのワーキングペーパー(安田行宏氏との共著)をDarla Moore School of Business-Hitotsubashi University Second International Conference on Corporate Finance(一橋大学)、SWET(北海道大学)、地域金融コンファランス(釧路公立大学)にて発表した。コメント等を通じて、分析仮説の見直しや貸し手である銀行の異質性を考慮する必要性があると認識したため、我々とは別に金融円滑化法の分析を進めていた大橋和彦、宮川大介氏(ともに一橋大学)と共同で論文を執筆することになり、分析仮説を再検討するとともに、銀行属性データとの接合を行う等の作業を行った。この他、家計による居住用不動産保有が金融資産選択に及ぼす影響に関するワーキングペーパーを執筆して、Hitotsubashi-RIETI International Workshop(経済産業研究所)、Household Finance Conference(一橋大学)で発表した。本研究のテーマと直接関係するものではないが、実証分析の手法を中心に、本研究を遂行するうえでも有益な知見が得られた。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度は、(ア)データベースの拡充、(イ)分析仮説の検討、を予定していた。これらのうち、(ア)「銀行株式保有制限規制」の分析にて予定していた銀行系VCデータの拡充については、分析対象を引き続き上場企業に絞る方がよいと考えたため、拡充をとりやめた。この点を除けば、「研究実績の概要」に記したとおり順調に進展していると考えている。
「銀行株式保有制限規制」についてはワーキングペーパーの改訂作業を続け、学術誌に投稿する。「金融円滑化法」については、共著者との議論を通じて、条件変更のタイプに関して、これまでの「返済繰延(financing)」か「債務減免(debt forgiveness)」かという区分に加えて債務の満期変更の観点も重要であるとの認識を持つに至った。この点を踏まえた分析仮説を改めて設定し、実証分析を行う予定である。
80万円の旅費の使用を予定していたが、投稿した国際学会での採択が1件に留まったため未使用額が生じた。また、英文校閲料として予定していた人件費・謝金10万円が未使用となった。旅費、人件費・謝金ともに次年度に支出する予定である。
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Hitotsubashi University Real Estate Markets, Financial Crisis, and Economic Growth: An Integrated Economic Approach Working Paper Series
巻: No. 77 ページ: 1-33
巻: No. 76 ページ: 1-42
銀行実務
巻: 8月号 ページ: 20-23