研究課題/領域番号 |
17K03815
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
山嵜 輝 法政大学, 経営学部, 教授 (60633592)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ファイナンス / 資産価格 / 投資行動 / 確率解析 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、先ず、前年度からの継続研究であるU字型プライシングカーネルによる動的均衡モデルに関する研究の仕上げを行った。本研究では、株価指数のボラティリティを嫌う投資家を仮定して、内生的にU字型プライシングカーネルを生成することに成功し、それによってdeep OTMのコールオプションの期待収益率がマイナスになることを示した。この研究成果をまとめた論文が学術雑誌Quantitative Financeに受理された。近日中に掲載論文誌が発刊される予定である。また、慶應義塾大学で開催された計量経済セミナーで同研究成果の報告を行った。 次に、新たなテーマとして、消費型資産価格モデル(consumption-based asset pricing model)に投資家の主観確率バイアスと個別企業の倒産リスクを導入したモデルの研究に取り組んだ。この拡張モデルの理論的な性質および特徴を調べ、asset pricing puzzleとよばれる資産価格理論上の未解決問題の説明に挑戦した。この研究では、1900年からの長期間にわたるマクロ経済データを活用し、本モデルによって、有名なequity premium puzzleの説明も合理的に可能であることを示したほか、倒産危機に直面している企業の株価が市場では割高に評価される傾向があることの理論的な説明も与えた。研究成果はワーキングペーパーとして公表しており、現在、海外学術雑誌に投稿中である。また、一橋大学で開催される金融研究会で同研究内容を報告する予定である。 さらに、北海学園大学の吉川大介准教授との共同研究として、証券の取引コストを考慮したマーケットメイカー(供給者)と投資家(需要者)の同時最適化による均衡証券価格に関する研究を実施した。現在は研究継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のとおり、平成29年度は3つの具体的な研究テーマに取り組んだが、1つ目の「U字型プライシングカーネルによる動的均衡モデルの研究」は、海外学術雑誌の受理により当初目的を達成したため、研究完了となった。2つ目の「投資家の主観確率バイアスと個別企業の倒産リスクを考慮した消費型資産価格モデルの研究」は、研究成果を論文にまとめ、現在は投稿中なので、査読者の返答を待つ状況にある。また今後は、学会や研究セミナーで口頭発表を行う予定である。3つ目の「取引コストを考慮した均衡証券価格の研究」については、今後も研究をすすめ、論文および口頭発表によって研究成果を公表する予定である。研究の進捗状況および達成度は当初計画に沿ったものであり、「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
前述の2つ目のテーマ「投資家の主観確率バイアスと個別企業の倒産リスクを考慮した消費型資産価格モデルの研究」は、論文査読の過程で査読者の指摘事項に対応する、もしくは掲載拒否されたときには論文内容を再考して改善した後に、他の論文誌へ再投稿する予定である。 前述の2つ目のテーマ「取引コストを考慮した均衡証券価格の研究」は研究を継続し、研究成果をまとめてワーキングペーパーとして公表するとともに、海外論文誌への投稿および学会や研究セミナーでの口頭発表を実施する予定である。 また、平成30年度の新しい研究テーマについては現時点で未定であるが、古典的な資産価格理論に行動ファイナンスやコーポレートファイナンスの要素を取り入れた研究に取り組みたいと考えている。 現時点で研究計画の変更はなく、今まで通り着実に研究を前進させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内業務(平成29年度は副主任として大学院運営を担当)多忙につき、国内外の出張回数が当初予定より少なかったため次年度使用額が生じた。ターゲットとなる海外学術誌の投稿料が当初想定よりも高額であることがわかったため、その費用に充当する予定である。
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備考 |
研究代表者個人のホームページ。
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