研究実績の概要 |
今年度の研究計画に従い、(i) 29年度の金融破綻連鎖モデルの不備を訂正して改良した。 (ii) 動学的相関GARCH モデルを計算するプログラムを作成した。(iii) Engle (2002,Jof B&E Statistics), Tsukuda,Shimada & Miyakoshi (2017,IR of Economics&Finance)のDCC-GARCH モデルを使い、各国の国債収益率データを用いて、市場間の相関係数を各年度について動学的に推定し、金融ネットワーク構造を解明した。(iv) 金融ネットワーク構造の変遷の中で、どの国へも強い相関係数をもつ金融センターを特定化した。それはシンガポールであり、その結果を論文として2018 SFM Conference(台湾)で報告した。また、別の手法であるネットワークのDegree Centralityの指標を使い金融センターを特定化した結果、それもシンガポールであり、論文として2018 PBFEAM Conference(USA)で報告した。(v)また、ネットワークモデルを動学モデルに拡張するために論文を作成し、2018WEAI Conference(Canada)で報告した。 (vi)さらに、ネットワークモデルにおける国際金融公共財の役割を解明すべく、N国M財の公共財モデルの論文を作成し、2018日本経済学会秋季大会(東京)で報告した。また、分析対象を国債からREITに変更し、類似の分析を行い、その結果を論文として2018EAEA Conference(Taiwan)と2018SMU Conference(Singapore)で報告した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画に従い(i)平成30年度の不備を訂正して改良する。(ii)Cornes&Hartley(2007,JPET)やMiyakoshi (2014,2016, Applied Econ.)の集計ゲームタイプの公共財理論を使って、どの国が金融センターに金融公共財を提供してネットワークを維持・管理すべきかを明らかにする。すなわち各国のdropout-valueを推定し、その上位数カ国が金融公共財の提供国となる。従って、これらの国で金融公共財配置の国際会議が開かれるべきである。(iii)国際金融公共財の配置により、各国のリスクがある値に低下した時、ネットワーク全体の破綻確率がどの程度低下するかをシミレーションする。これにより、金融公共財の配置が政策手段となりうるかを考察する。(iv)実証編で金融センターをも考慮して推定されたネットワークにおいて、各金融センターでどの国の線(連結性)を遮断すると最も破綻確率が下がるのかを比較して、その国の線の遮断が金融センターにおける政策手段となりうるかを考察する。単にセンターを先験的に定め、2008年のリーマンショックの時にセンターと他の金融市場の連結性がどう変化したかを実証研究したLeon& Berndsen(2014,JofFS), Souza et al(2016,JEDC)との違いを明確にする。(v)これらの研究成果を論文として取りまとめ、日本金融学会(平成31年10月)、または、アメリカ西部経済学会(平成31年7月)などで報告する。(vi)平成29,30,31年度の研究成果を報告書として取りまとめる。
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