研究実績の概要 |
平成30年度以降に、アンケート調査を実施し、分析を進めていくために、初年度である平成29年度は、中小企業金融と保険の関係を明らかにしようと試みた。具体的には、過去に実施した中小企業金融のアンケート調査の分析を行ってきた。実証的な分析を進める過程で、今後、新たにアンケート調査を実施していく上での重要な示唆が得られた。また、分析の過程で浮かび上がってくる課題、掘り下げて質問することができる項目が明らかになるなど、調査を進めていく準備が整いつつある。 本年度は、2014年2月に実施したアンケート調査(Meiji University, Faculty of Commerce, Discussion Paper No.9.)で得られたデータに基づいて、以下のような分析を進めた。まず、社債の発行や株式の発行など、資金調達の手段が多い大企業と比べて、資金制約に直面することが多いと考えられる中小企業が、生命保険の解約をどのように利用しているのかを明らかにしようと試みた(Meiji University, Faculty of Commerce, Discussion Paper No.6.)。続いて、資金制約だけではなく、オーナー企業であるなど、所有構造が経営者に集中し、所有と経営が未分離な傾向がある中小企業の損害保険の需要の構造についても、明らかにしようとしてきた。さらに、中小企業のリスク管理の実態については、多くのことが明らかになってきていないため、デリバティブ購入の動機(リスク管理目的、投機目的)に注目しつつ、デリバティブを購入している中小企業の特徴について、分析を進めた(Meiji University, Faculty of Commerce, Discussion Paper No.10.)。
|