研究課題/領域番号 |
17K03818
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小倉 義明 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70423043)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 企業間ネットワーク / リレーションシップバンキング / 情報生産 / 銀行融資 |
研究実績の概要 |
企業間取引ネットワークにおいて買い手として中核的な位置にある企業は、経営不振時に銀行からの救済融資を受けやすい傾向を、理論モデルとして明確に示し、これに基づく実証研究をこれまで行ってきたが、この研究に対して、以下のような大幅な改訂を施した。 理論分析では、これまで均衡存在証明を明確に示すことができていなかったが、不動点定理などを用いて、明確にこれを証明した。この過程で不必要な仮定を整理し、モデルを整理した。 実証分析では、2006年時点の単年度データのみをこれまで用いていたが、これを2008年から2016年までの複数年度に拡張するとともに、より明示的に救済融資を受ける確率を推定モデル化し、理論モデルにより忠実な実証モデルを用いた実証分析を行った。さらに、中核性の指標となる影響力指数(influence coefficient)を計算する際に、これまではすべての取引関係のウェイトが等しいとの仮定を置いていたが、これを改め、売り手と買い手それぞれの業種、あるいは中間投入依存度に応じてこのウェイトが変化するとのより現実的な仮定に基づく計算方法を考案し、応用した。 この実証分析からは、特に2009-10年の世界金融危機時において、営業キャッシュフローが支払利息を下回るなど危機に陥った企業のうち、買い手として中核的な企業の方が非中核企業よりも、低利の救済融資を受ける確率が有意に高かったことが明らかとなった。また、銀行間競争が緩やかな地域に所在する企業で上記中核性が高くなる傾向があることから、このような地域で上記の救済融資が供給されやすいことが示唆される結果となった。また、融資先間のネットワークの形状が銀行のリスクに与える影響を調べる一環として、各銀行の融資先の影響力指数の変動係数と、倒産距離などで計測されるリスクの相関を計測したが、特に有意な結果は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
企業間ネットワークの形成、あるいはこれを考慮した企業による銀行選択を統計的に分析するために必要なネットワーク情報の複数年度化、これに対応した企業財務データ、銀行財務データの整理は完了しており、分析の準備が整った。しかし、本研究の主要分析対象の一つである、ネットワークの形状が銀行のリスクに与える影響に関しては、当初想定していたような結果が得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の2点に注力する。 1.上記の改訂版分析結果の取りまとめ 2.企業間ネットワークの形成過程と、ネットワークを考慮した企業による銀行選択に関する計量分析
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次年度使用額が生じた理由 |
実証研究の一部で進捗が滞っているために、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、学会報告、学術誌投稿、追加データの購入に充当する。
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