研究課題
基盤研究(C)
企業間取引ネットワークと銀行取引に関して、以下の点をデータから明らかにした。①企業間取引ネットワークにおける主要な買い手として中核的な地位を占める企業が危機時に救済融資を受けやすく、この傾向は特に融資市場の集中度が高い地域で強い。②融資先の取引企業の多くと融資取引がある銀行ではより多くの非公開情報が融資条件設定に用いられている。③人口高齢化などの要因で資金需要が弱い地域で融資競争が激しく、そのような地域で金融機関がより多くの信用リスクを抱える傾向がある。
銀行行動・企業金融
不振企業への継続融資は「ゾンビー融資」とも呼ばれ批判されることが多いが、企業間取引ネットワークを通じた他社への需要波及効果を考慮すれば、むしろ銀行利益に貢献する可能性があることを明らかにした。この実証研究の過程で、そのような中核的企業を見分ける手法の改善を提案した。また、融資市場の集中度が金融機関の上記行動に与える影響を明らかにしたほか、このような企業間ネットワークを意識した金融機関の融資判断に対応した企業戦略が金融機関の抱えるリスクに与える影響について、研究の端緒となる知見を提示した。