本研究は、非金融企業が行う負債による資金調達とその満期構成の決定要因を明らかにし、金利にもとづいた金融政策の有効性評価を目指している。 本年度は、企業の負債による資金調達や負債満期構成に対して2013年4月に導入された量的・質的金融緩和政策が与えた影響を分析した。短期負債比率(短期負債/総負債)や債券比率(社債等/総負債)は増資によっても影響されるため、まず、増資の有無を被説明変数、前年度ROA(+)、前年度現預金/総資産比率(+)、前年度設備投資/売上高比率(+)、前年度研究開発費/売上高比率(―)、前年度株式簿価/時価比率(―)、前年度有形固定資産/総資産比率(―)を説明変数とするパネル・プロビットモデルを推定した。これらの変数はすべて、変数後()内に示した方向の影響が1%水準で有意であった。また、量的・質的金融緩和政策導入後を指示するダミー変数とこれら変数との交差項を説明変数に追加して推定し、例えば金融緩和政策後においても前年度ROAは増資発生にプラス効果をもつもののその大きさは有意水準5%で低下しているなど、政策導入前後で影響度が変化したことが示された。 次に短期負債比率を被説明変数、プロビットモデルによる増資「確率」推定値(+)、日本国債10年満期債および中期債の残高合計 (―)、前年度ROA(+)、前年度労働資本比率(+)、設備投資/売上高比率(―)、研究開発費/売上高比率(―)、有形固定資産/総資産比率(-)、およびこれらと2013年4月以降を指示するダミー変数との交差項を説明変数とするパネル回帰分析を行ったところ、変数によって有意水準は異なるものの、変数後()内に示した方向の影響が有意であるという結果を得た。ただし、金融緩和政策導入前後で変数の影響度が有意に変化しているのは前年度変数と有形固定資産総資産比率のみで、いずれもプラス方向であった。
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