本研究は、日本における近年の非正規雇用の増加が、日本企業の資本コストに与えた影響を分析した。特に、2003年に行われた労働者派遣法の改正以降に急激に増加した製造業における派遣雇用が、企業の株主資本コスト及び負債資本コストに与えた因果的影響を、上場企業の株価・財務データを用いて分析した。推定結果として、製造業の資本コストは、非製造業のそれと比較して、法改正以降に有意に低下したことが示された。また、製造業における人件費の硬直性も法改正以降に同様に低下した。これらの結果は、派遣雇用の増加による人件費の変動費化が企業のリスクを低下させたことにより、資本コストを低下させたことを示唆している。
|