研究課題/領域番号 |
17K03822
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
北野 友士 桃山学院大学, 経済学部, 准教授 (90532614)
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研究分担者 |
松浦 義昭 金沢大学, GS教育系, 講師 (10377377)
西尾 圭一郎 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (20453368)
小山内 幸治 滋賀短期大学, その他部局等, 教授 (40204177)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 金融教育 / 金融リテラシー / コミュニケーション戦略 / フォワードガイダンス / layering / 中小企業経営者 |
研究実績の概要 |
本研究課題は金融リテラシーの向上が期待形成を通じて金融システムに与える正の影響を明らかにすることを目的としている。またそれを通じて中央銀行のコミュニケーション戦略への示唆を得ることが期待される。 本年度はまず前年度に行ったイギリスでのヒアリング調査の一部を「イングランド銀行によるコミュニケーション戦略の現状と課題」という研究ノートにまとめた。イングランド銀行によるフォワードガイダンスは一定の成果を挙げているが、現在はさらに情報伝達、会話、教育に力を入れている。とりわけ研究代表者らが注目したのは、「インフレーションレポート」における階層分け(layering)である。つまり、Visual Summary を公表することで、これまで金融政策に対する関心の低かった層とのコミュニケーションに取り組んでいる。 上記の研究ノートの成果を踏まえて、本年度は金融リテラシー科目の受講者を処置群、それ以外の科目の受講者を対照群として予備的なアンケート調査を行い、金融教育およびlayering(展望レポートの簡易版独自に作成)が期待形成に与える影響を検証した。その結果、金融リテラシーの向上はさまざまな将来予測を改善し、またlayeringは低リテラシー層への働きかけに効果がある可能性が示唆された。これらの結果をまとめた小論文である「金融経済教育およびLayeringがもたらす国民とのコミュニケーションの改善」は金融広報中央委員会主催の金融教育に関する小論文・実践報告コンクールにおいて奨励賞を受賞するに至った。 さらに並行して取り組んだ中小企業経営者の金融リテラシーと企業業績との関係性については、「地方創生に向けた地域金融の役割―経営者教育の持つ可能性―」でまとめた。中小企業経営者に対する教育プログラムの実施と、金融リテラシーの獲得・向上は企業業績を改善させる可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備的調査の結果を踏まえて質問内容等を改善した本調査は既に実施済みであり、また各大学の協力を得て目標としていたサンプル数600以上を確保している。本調査の分析も一定程度進んでおり、当初の予定通り2019年度中に英語で発表する準備を進めている。 加えて金融リテラシー科目の受講者を対象として、学習経験・環境、各単元の理解度、および達成感との関係に関するアンケート調査も実施済みであり、金融教育プログラムの改善案の作成についても随時進めている。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況にも書いた通り、すでに実施した本調査の分析結果を英語で発表する準備を進めている。秋には投稿できるようにしたい。 また金融リテラシー科目の受講者に対するアンケート調査を踏まえた金融教育プログラムの改善案については、日本FP学会等での発表を予定しており、ピアレビューを受ける。そしてそのピアレビューを受けて、後期に開講する金融リテラシー科目にプログラム案を反映させ、その成果をまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額が生じた理由については、(1)年4回の予定であった研究会が年2回にとどまった、(2)研究発表旅費について東京を想定していたが、実際には名古屋市立大学での日本金融学会に参加することとなった、(3)経済教育学会の二日目が台風で中止となった、という3つがある。 次年度は英語での発表旅費を主たる経費としており、繰り越し分を英語での発表直前の密な研究会の開催のための旅費に充てる予定である。
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備考 |
第15回金融教育に関する小論文・実践報告コンクール 奨励賞受賞
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