本研究の目的は、グローバル金融危機下における外国人投資家の投資行動とその日本の株価へのインパクトを分析することで、これまで学術的には明確に認識されてこなかった、外国人投資家が保有比率を高めていることに伴い生じている、日本の株式のリスク要因を明らかにすることであった。グローバル金融危機が勃発した際に、大規模な外国人投資家の売り圧力と、結果としての強い短期的な株価下落圧力に晒されやすいのがどのような属性を持った株式であるのかを、2008年度の金融危機の際の経験を踏まえ、外国人投資家の保有構造から明らかにすることを目的としていた。現段階ではまだ論文の形になってはいないものの、我々の調査から明らかになったのは、外国人投資家の保有比率が相対的に高い銘柄、特にその中でも危機の直前に保有比率の増加が観察される銘柄は、危機の際の株価下落率(最大ドローダウン)が高く、また下方ボラティリティが上昇するという傾向であった。これはKim and Iwasawa(2016)が韓国市場を対象に行った分析結果と同様なものである。我々はこの点をまとめて論文にする構想を持っていたが、2020年に入り、新型コロナ肺炎の影響による世界同時株安が生じ、外国人投資家が日本株を大きく売り越す中で株価が急落するという、2008年度後半と同様の現象が観察されることになった。予備的な調査をしてみたところ、今回のケースでも前述したものと同様の結果が観察された。そこで今回のケースをエビデンスとして加え、論文を改編し出版することを構想している。
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