研究課題/領域番号 |
17K03831
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石原 俊時 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 准教授 (70221760)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スウェーデン / 福祉国家 / 社会保障制度 / 地方自治体 / 児童福祉 / 救貧制度 |
研究実績の概要 |
本研究は、1937年に社会省によって選任された政府調査委員会である社会福祉委員会が主導した社会保障制度改革に着目し、その歴史的意義を、社会保障制度の体系化とそれに伴う福祉供給諸主体(国家、ランスティング、基礎自治体)の役割の再編という観点から明らかにしようとするものである。 本年度は、本研究の4つのモメント、1)社会保障制度の展開、2)地方自治体の福祉行政の発展、3)社会福祉委員会で展開された議論や活動の分析、4)以上を踏まえた上での社会福祉委員会の歴史的位置づけの検討のうち、計画にしたがい、1)と3)に重点を置いて研究を進めた。 1)に関しては、社会保険・公的扶助(救貧)・社会サービスの相互関係に着目しつつ、1930年代から50年代に進展した様々な社会保障制度改革の概要を、議会報告書などの同時代文献や二次文献を読んで把握し、社会福祉委員会が成立した歴史的背景やそれが推進した社会保障制度改革の歴史的脈絡を明らかにする作業を進めた。 3)に関しては、昨年8月3日から23日と本年3月16日から4月1日の期間、ストックホルムに滞在し、国立文書館や王立図書館を訪れ、社会福祉委員会文書や社会福祉委員会が刊行した文献を閲覧した。それにより、1937年から50年までの委員会議事録全部や会議資料や覚書の多くを読み通した。合わせて委員会の活動中に提出された報告書19冊に目を通したので、委員会の活動の展開を大よそ把握できたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、初年度に社会福祉委員会の成立をめぐる経緯を中間報告として論文にまとめるつもりであったが、委員会議事録を読み進めるに従い、社会福祉委員会が、同時期に選任された地方税改革や人口問題などを検討する政府調査委員会の活動などと密接な関係を持っていたことが判明し、その成立の背景や歴史的位置づけについては、それらの活動を視野に収めて分析する必要が認識された。具体的には、当初の計画に対して、それら地方税改革委員会などに関する一次史料を読みつつ、社会福祉委員会の成立過程を位置づけなおす作業が追加された。それゆえ、当初の見通しよりも多くの作業をこなさなければならず、初年度の目標達成が遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、初年度の遅れを取り戻すことに努めたい。次に、当初の計画どおり、国家救貧監督官文書などから地方自治体の発展動向を把握する作業を進めたい。さらに、これまで読んできた社会福祉委員会文書に基づき、そこでの自治体福祉行政機構改革と救貧法撤廃(社会扶助法の制定)についての議論の整理を出発点として、社会福祉委員会における社会保障制度改革構想の全体像に接近する作業を進めていきたい。
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