本研究では、危機下における都市社会の歴史的実態を解明するために、世界恐慌期ドイツにおける失業者救済体制の変容とその帰結を都市ガバナンスの視角から考察した。分析視角の都市ガバナンスは、諸アクターの相互関係を通じて構築され、外在的・内在的要因により変動する都市空間の社会的秩序と定義した。ライヒ失業保険の「破綻」の契機となった1932年6月のライヒ緊急令を糸口にライヒとドイツ都市会議の対立を分析するとともに、ハンブルクにおける雇用創出の実態を明らかにすることにより、「劣等分子」に位置づけられていた公的扶助受給失業者の待遇改善に都市自治体による失業者救済の社会性が見いだされることを明らかにした。
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