研究課題/領域番号 |
17K03836
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡田 知弘 京都大学, 経済学研究科, 教授 (60177053)
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研究分担者 |
大島 朋剛 兵庫県立大学, 経済学部, 准教授 (20619192)
水島 和哉 京都大学, 経済学研究科, 研究員 (40764147)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 近代日本酒造業 / 都市形成史 / アーカイブズ / 近代地域産業史 / 京都府伏見町 |
研究実績の概要 |
本研究は、戦前期の京都府伏見町を対象に、①酒造業史研究の視点からの近代産地形成メカニズムの解明、②都市形成史の視点からの伏見酒造業と伏見町の都市拡大との関連性及び市制移行過程の解明、③それらの研究をすすめるための地域産業史のアーカイブズの拠点形成を、目的としている。 平成29年度は、実施計画に基づき、①及び②について、基礎的資料の収集、所在確認作業に力点を置き、併せて京都大学経済資料センターに寄託されている伏見酒造組合資料の整理・目録作成・分析に加え、明治・大正期を中心に日本醸造協会発行の『醸造協会雑誌』と『日本醸造協会雑誌』、大阪財務協会発行の『大阪財務』、『大阪朝日新聞』『東京朝日新聞』『東京日日新聞』に掲載されている伏見酒造業及び伏見町に関する記事を探索し、目録化した。 また、③について、研究分担者の水島が、国文学研究資料館主催アーカイブズ・カレッジ(史料管理学研修会)長期コースに参加し、修了論文を提出して研鑽を深めるとともに、全国のアーキビストとの情報交換を行った。さらに、滋賀大学経済学部附属史料館、神戸大学経済経営研究所附属企業資料総合センター、九州大学附属図書館付設記録資料館、和歌山大学・紀州経済史文化史研究所の運営担当者を京都大学に招いて、研究代表者岡田が責任者・水島が事務局となって4回にわたって「人文・社会科学資料のアーカイブに関する研究会」を実施し、アーカイブズ運営についての教訓と課題を共有化した。 さらに、年度末には、環境アセスメント学会情報委員会主催「民間が保有する環境アセスメント資料のアーカイブ化に関する調査研究」公開研究会が京都大学で開催され、地域産業アーカイブズについて、岡田と水島が報告を行い、同学会員との意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、①酒造業史研究の視点からの近代産地形成メカニズムの解明、②都市形成史の視点からの伏見酒造業と伏見町の都市拡大との関連性及び市制移行過程の解明、③それらの研究をすすめるための地域産業史のアーカイブズの拠点形成の3点であり、初年度にあたる平成29年度の実施計画では、①と②についての基礎資料の収集、③のアーカイブズの拠点整備のための前提となるアーカイブズ運営及びコンテンツの基礎を構築するところにあり、先行する産業史関連のアーカイブズの情報収集を図ることを掲げた。 上記の研究実績概要でも述べたように、基礎資料の収集・整理や、それらのコンテンツのデータベース化によるアーカイブズの拠点整備の土台づくりについては、比較的順調に進捗したといえる。ただし、酒造業の現存資料調査については、調査先リストの作成に留まり、調査自体はこれからである。また、大学のアーカイブズの実態調査については、4大学の運営担当者を招聘することで大きな成果を得たが、民間企業・団体のアーカイブズ調査については、宝ホールディングス株式会社歴史記念館を訪問調査しただけである。 さらに、本研究の成果の一端は、年度末に環境アセスメント学会情報委員会主催公開研究会で報告したものの、独自のシンポジウムの開催には至らなかった。 以上から、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、前年度に引き続き、伏見町における近代酒造業の発展と都市形成に関わる資料調査を継続するとともに、可能なところから、その成果をデータベース化し、分析を行うようにする。そのために、大学院生や学生を研究補助者として活用するとともに、資料に基づく研究の方法を指導する。 また、既に発送リストができている京都府内の酒造業者(廃業者を含む)に対して史料の保存状況と公開の意志についてのアンケート調査を実施し、必要に応じて訪問調査を行って、史料の掘り起しを行う。併せて、大学だけでなく民間企業・団体の産業関係アーカイブズを調査し、とくに酒造業に近い分野については、交流・連携できるように働きかけを行う。 さらに、可能ならば、産業史及び流通史を専門とする研究者に研究分担者に加わってもらうなど、研究体制の強化を行い、研究目的の達成を図りたい。 最後に、研究の成果を、年度末までに論文やシンポジウム・公開研究会の形で発表するよう、計画的に研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、第一に基礎調査の対象となる近代酒造業及び伏見町関係史料、雑誌、新聞の所在情報の確認に時間がかかり、研究補助をしてくれる大学院生・学生の確保と稼動が遅れたことにある。このため、資料から関係記事の抽出、データベース化作業に関わる謝金支出が当初計画通り執行できなかった。第二に、当初計画に盛り込んだ京都府内酒造業者(廃業者)に対する史料の保存状況と公開に関わるアンケート調査について、送付先リストの作成作業までは行なえたものの、郵送アンケートの実施を具体化するまでには至らなかったことがあげられる。第三に、国内の産業関係アーカイブズの訪問調査も、日程の確保ができず実現しなかった。 今年度は、「今後の研究の推進方策」で述べたように、第一に早期に大学院生、学生を研究補助者として確保し、昨年度に作業方法が確定したデータベース構築作業をすすめ、併せて研究補助者の教育と研究の前進を図る。第二に、昨年度、発送リストを作成した京都府内酒造業者向けアンケート調査と結果の取りまとめを行う。第三に、研究分担者を増やして研究体制を強化したうえで、国内産業アーカイブズの訪問調査を具体化する。さらに、他のアーカイブズの担当者を招聘し、研究会・シンポジウムを開催するために科研費を活用したい。
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備考 |
滋賀大学経済学部附属史料館、神戸大学経済経営研究所、九州大学附属図書館付設記録資料館、和歌山大学紀州経済史文化史研究所からアーカイブズ担当教員を招聘して、4回にわたり「人文・社会科学資料のアーカイブに関する研究会」を開催し、産業アーカイブズ構築に向けて研鑽を深めた。 また、研究分担者の水島が、国文学研究資料館主催アーカイブズ・カレッジ長期研修を履修し、修了論文(全20頁)を提出した。
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