2020年度は本科研の最終年度(延長後)にあたるが、新型コロナウィルス感染症の影響で予定していた海外渡航による史料調査や国内外での研究成果報告の予定変更(中止)があいついだ。2020年3月に予定していたドイツ連邦共和国における史料調査を中止せざるを得なかったことで、学術的な報告ないしそれを発展させた論文の形での成果を得ることが遅れている点は遺憾である。 2020年中には以下の書籍を出版し、これまでの本科研を利用した成果を取り入れ、啓蒙書(新書)の形で、これまで蓄積してきた鉄道業を視座に据えたドイツ語圏経済史・経営史研究を総括することができた。ばん澤歩『鉄道のドイツ史:帝国の形成からナチス時代、そして東西統一へ』中公新書(2583)2020年。 また、2020年9月27日、鉄道経営史研究会(代表 中村尚史東京大学教授)において旧東独圏の鉄道業について報告(「1970年代までの東独(DDR)国鉄・ライヒスバーンの経営問題:西ベルリンSバーンの事例から」)をおこない、議論した。 これらの成果を踏まえ、発展させることによってより現代に近い時期のドイツ鉄道史研究に進み、その成果として以下を出版した。ばん澤歩『ふたつのドイツ国鉄: 東西分断と長い戦後の物語』NTT出版、2021年3月。以上の業績から、当初研究の主眼であったグローバル・ヒストリーの視点からドイツ(ドイツ語圏)の鉄道業の発展とその社会経済史的含意について明らかにする概観を得ることができた。
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