本研究は、西陣、桐生、福井といた近代日本における代表的な絹織物産地が、どのような要因により技術や組織面で異なる発展経路を描いたのかを明らかにすることが目的であり、同時に得られた知見を国際的に発信することに重きを置いた。近代以前から高度な絹織物業が発展していた西陣、明治半ばに羽二重生産が開始され目覚まし発展を遂げた福井、そして西陣から不断に導入した技術を生かして大衆化路線を目指した桐生という、それぞれの発展経路が明らかにされた。そのプロセスにおいて共通していたのは、要素賦存に基づいた技術導入、産地内の関連産業の成長や企業間分業の構築、人的資本の育成、同業者組合の活動だったことが明らかにされた。
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