研究課題/領域番号 |
17K03844
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
古賀 大介 山口大学, 経済学部, 教授 (50345857)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 第一次大戦期 / イギリス / 大手銀行 / 職員採用 / 外国部 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで国際金融センター・ロンドン地位低下の契機として強調されてきた「第一次大戦期」を、逆に、同市の国際金融センターとしての再生と現代的特徴の起源として、新たな視角から問い直すことにある。より具体的には、まず、「第一次大戦期」におけるイギリス大手銀行の国際業務に注目し、ポンド凋落にも関わらず、世界的なユーロダラー市場・外国為替市場として復活を遂げたロンドン金融市場の新たな発展の源流を辿ることにある。今一つは、国際業務担当人材育成に適さなかった第一次大戦前後に始まるイギリス大手銀行独自の人事慣行(リクルートとキャリアモデル)と、外国系金融機関および外国人金融業従事者が主体となった現代ロンドン金融街の特徴(「ウインブルドン現象」)との関係性を検証することにある。 本年度は、イギリス大手銀行のアーカイブ等において、上記目的に沿う史料を新たに収集し、分析に努める予定であったが、諸事情(「現在までの進捗状況」を参照)によりこれが果たせなかった。このため本年度は、報告者がこれまでに別の課題・観点から収集していた「第一次大戦期」における銀行関連史料の中から、上記目的の遂行にわずかながらでも資する部分を抽出し、以下のことを行った。一つは、国際業務に関して、2つの大手銀行(ロイズ銀行・ミッドランド銀行)の「損益計算書」等を手掛かりに、戦時期における「外国部」の収益額、資金運用額、預金額(外貨建預金保有額を含む)の解明に努め、その特徴を明らかにするのとともに、両行ともイングランド銀行に巨額の外貨建預金を保有していることを発見した。この成果は、年度末に論考としてまとめた。もう一つは、人事に関して、大戦直前・直後の史料の中から、大卒行員採用計画(1914年ロイズ銀行)と「外国部」職員応募書類(1919年ミッドランド銀行)を見出し、第一次大戦との関連も含めその分析に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度(平成29年度)前半期に、イギリス大手銀行アーカイブにおいて、第一回目の史料調査を行う予定であったが、渡航のプランニングをしている矢先に、訪問先であるマンチェスターおよびロンドンにおいてテロが相次いて発生したため、情勢が落ち着くまで調査渡航を見合わせることにした。また年度後半も、校務上の事情(学部入試全体の責任者等)に因り、まとまった期間、海外に滞在することが叶わなかったため、本年度予定していた調査を次年度に繰り延べざるをえなくなった。このような事情から、研究の進捗状況に遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度(平成29年度)の遅れを取り戻すべく、次年度(平成30年度)はイギリス大手銀行等における史料調査を効率的かつ確実に実施し、帰国後の史料整理・分析も併せた研究の進展に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
先の「現在までの進捗状況」にて述べた事情により、当該年度、イギリスへの調査渡航を取りやめたため、上記の残余が生じた。当該年度の残余分は、次年度前半期に、当該年度当初予定していた調査渡航の費用に充てる。また、次年度の渡航調査については、計画通り実施する予定であり、別途予算を計上する。
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