研究課題/領域番号 |
17K03844
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
古賀 大介 山口大学, 大学院東アジア研究科, 教授 (50345857)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ロンドン・バランス / 第一次大戦 / 預金誘引政策 |
研究実績の概要 |
2021年度も、昨年度に続きコロナウイルス感染症の影響により、厳しい出入国制限(勤務先での海外出張規制)が課せられたため、海外調査を行うことができなかった。このため、本年度は、これまでに収集した史料の分析を基に、本研究課題の主要項目である「第一次大戦期」(その前後を含む)における「外国部」の活動実態とその歴史的意義を総合的に検証・考察した上で、「経営史学会」全国大会報告準備論文としてまとめた。分析から浮かび上がった、研究史上、極めて重要となる新たな発見を含む、成果の一部は「経営史学会」(全国大会・2021年12月5日)において報告した。 主要な点のみを紹介すると、1.複数の大手クリアリングバンクの史料から、研究史上これまで不明であった、「第一次大戦」直前、すなわち「ポンド体制」全盛期における「ロンドン・バランス」を算出し、最大で推計5000~6000万ポンド(預金総額の6~7%前後)と比較的少額であったことを提起した。2.しかしその後、第一次大戦期に入ると「ロンドン・バランス」は急増し、戦後(1927年時点)においても、戦前と同水準かそれ以上であったことを明らかにした。これらは、従来の研究史における「一般的理解」とは、大きく異なるものであろう。 その背景・理由について。1.に関しては、ロンドン金融市場が極めて効率的であったため、低利の銀行預金以外での運用が活発に行われ、決済尻としての預金(「ロンドン・バランス」)は「最小限」に留め置かれたからだと考察した。2.に関しては、戦時中、イギリスが軍事物資輸入により巨額の貿易赤字を計上し、貿易代金(外国への支払い)の多くが「ロンドン」口座に流入していたこと、また、戦時中、ポンド相場の下落を阻止する方策として、民間銀行とイングランド銀行・英政府が一体となり、「預金誘引政策」(外国人口座に対する高金利政策)を実施していたためと考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度同様、2年続けて感染症問題の影響により、海外資料調査を中断していることから、研究を遂行する上で必要な史料を入手できないでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
必要な海外調査については、2022年度のできるだけ早い時期に実施し、研究を遂行する上で必要となる史料の入手・分析に努める。また、それと並行して、2021年度にとりまとめたクリアリングバンク「外国部」の業務展開に関する内容・(中間)成果の研究史的位置づけを確認すべく、先行研究のサーベイを改めて行う。これらの作業を経て確認された内容と2021年度にとりまとめた「準備論文」の内容を統合し、改めて整理・分割したうえで、それぞれ学会誌等への投稿・掲載を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も、コロナウィルス感染症の影響により、海外出張ができなかったため、「旅費」を中心に繰り越しが生じたが、渡航制限が緩和された2022年度は、これまでできなかった分を含めやや長期の海外調査を実施する予定である。
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