研究課題/領域番号 |
17K03845
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
張 暁紅 香川大学, 経済学部, 教授 (00452722)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中国人中小工場 / アジア・太平洋戦争期 / 土着資本 / 膨張工業地域 / 都市社会問題 / 労働力確保 / 戦時統制経済 / 闇経済 |
研究実績の概要 |
1.研究成果1:1940年代前半、「満洲国」の膨張工業都市における都市社会問題について ①学会報告:張暁紅「膨張工業地域における都市社会問題ー奉天市の中国人労働者を中心にー」(共通論題『「戦時社会問題」の展開と帰結』)2017年度政治経済学・経済史学会秋季学術大会・総会、大阪商業大学、2017年10月15日。②学術論文:張暁紅「膨張工業地域における都市社会問題ー奉天市の中国人労働者を中心にー」『歴史と経済』239号、40-54頁、2018年4月(刊行予定)。同研究は、日本帝国の支配下において急速に膨張した奉天市を事例に、中国人労働者の生活実態を考察することによって、アジア・太平洋戦争期の植民地都市に発生した都市社会問題の特徴を明らかにすることを目的としたものである。戦時経済の進捗に伴い、1940年の生産実績は生産能力の半分に減少するほど資材・燃料不足、労働力確保問題による影響は大きかったことを受けて、論文では、労働力の問題に関しては、労働者の払底と同時に、日系大企業に勤務した中国人労働者が、生活を維持するために、高賃金を提供してくれる中国人経営工場に流動する現象を指摘し、中国人中小工場が高賃金の支払いを可能にした要因は、原料調達、生産、販売の全過程をすべて闇市場に依存したことであると解明した。上記研究成果は、交付申請書に記載した「研究の目的」に照らせば、検証課題で列記した3点の何れも該当する内容である。 2.研究成果2:夏季(8月9-16日)の中国吉林省図書館、長春市図書館の資料調査に基づく研究の推進 ①海外への資料調査によって、『哈爾濱土着資本質的調査報告書』満洲調査機関聯合会、1944を含む調査報告書類などの、中国東北にしか所蔵されていない貴重な資料を入手した。②現在、これらの資料を読解して学会における研究報告および学術誌への投稿を想定した研究を推進している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題は当初の計画以上に進展している理由は以下の3つである。 1.政治経済学・経済史学会の年度大会の共通論題での報告が承認されたことを受けて、本研究課題の推進に当初計画以上の時間と労力を注いだ結果である。また、共通論題の準備段階において、戦時社会問題を抱える他都市との比較を、数回にわたって研究パートナーと議論した結果、本研究課題都市の独自性と共通点を改めて認識することができた。これらのプラス要因は早期の研究成果の公表に寄与した。 2.2017年夏季に実行された中国東北地域での資料調査において、質の高い歴史資料と出会ったことは、研究を推進させていくことを可能にした。 3.大学図書館の相互貸借サービスの利用は資料調査のための日本国内出張の回数を減らすことができ、また大学院生のアルバイト要員に資料の入力や収集の補助をさせることにより、交付者に研究のみに専念することができた。以上の研究環境の整備は効率よく研究を進めることを可能にした。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画の通り、資料調査に関しては、30年度以降は日本国内の調査を行い、中国で収集した資料と合わせて整理と分析を進め、検証結果をまとめて公表することに集中する予定である。なお、必要に応じて追加調査を行う。研究成果の発表に関しては、論文1本を公表する予定である。 1.資料調査と整理分析 ①日本国内の資料調査(30年度8月あるいは9月)。国内においては東京大学などの旧高等商業学校所蔵の資料を対象とする。OPAC検索で資料所蔵を把握し、相互貸借の利用を優先的に考慮し、必要に応じて国内出張による資料調査を行う。②資料の整理と分析に専念するするように心がける。中国各档案館や吉林省社会科学院満鉄資料館から収集した資料は手抄のものが多いため、その整理と分析作業は長時間を要することが見込まれる。場合によって、入力や図表の整理は大学院生の手を借りることも想定している。③補充調査(30年度2~3月)。調査先での資料収集に見落としがあった場合、収集した資料に欠落があった場合には、ピンポイントで追加調査も行う。 2.研究成果の公表 上記調査分析に基づき、論文を作成し公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(B-A)は7,707円である。この部分の助成金は資料の相互貸借に使用する予定である。
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