1.最終年度の成果:日本支配に対して協力と対抗の二面性を合わせ持つ都市中国人商工業者の存立形態、業種別的な特徴、ならびに、戦中戦後の瀋陽・哈爾濱に展開された工業化における中国人商工業者の役割と変容について考察した。その成果は①論文「『満洲国』末期の哈爾濱市の中国人商工業者」としてまとめ、香川大学『経済論叢』に投稿する予定である。②学会報告:「戦中戦後の瀋陽・哈爾濱における工業化」パネル・ディスカッション「戦中・戦後初期における中国東北の工業化」2019年度政治経済学・経済史学会秋季学術大会、早稲田大学、2020年1月11日。また、上記の研究成果を踏まえて、③書評「上田貴子著『奉天の近代――移民社会における商会・企業・善堂』」『経営史学』54巻3号、2019年12月、51-53頁、④書評「李盛煥・木村健二・宮本正明編著『近代朝鮮の境界を越えた人びと』」『歴史と経済』、投稿済み、巻号未定、を完成している。 2.研究期間全体の成果:本研究はほぼ計画通りに進んだ。期間全体の成果として、以下の研究課題を完成した。①業種別に、中国人商工業者の生産、流通・販売実態、および都市工業化におけるその役割を検討し、それぞれの特徴を明らかにすることができた。②日本支配に対して協力と対抗の二面性を合わせ持つ都市中国人商工業者の存立形態を考察し、③綿織物業と機械器具工業の両業種を比較し、相反する植民地工業化政策の下で活動した商工業者の異同とその特質を析出した。 3.今後の研究へのつながりについて:本研究によって、上記の研究成果のみならず、「満洲国」期の研究は新中国創成期の中国東北経済と強い関連性をもっていることを確認できた。本研究は、次の研究課題となる「戦中戦後の瀋陽・哈爾濱における工業化と商工業者」の起点となった。
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