本年度は,毛利家文書,麻生家文書の入力に時間を割いた。 麻生家文書については,有価証券の投資残高,配当,資本差益に関わる情報を一次資料から抽出して入力した。研究開始当初は読み方に苦労したが,本年度は会計制度・運用方法についての状況がみえてきた。そのため,先行研究と比較した場合の具体的な分析手法について考えることが可能となった。エクセルに上記の諸系列を入力後,分割してファイルを作成し,それぞれのデータを並び替えた。さらに,保有有価証券を地域・業種・企業系列で並び替えを行うことができるようにデータファイルを整備した。配当金に関しては抜けがある箇所がいくつか存在したため,営業報告書や社史,株式年鑑などに記載された配当金額・配当率を保有投資残高(払込資本金ベース)で計算しなおし,空白を埋めることに力を割いた。さらに,投資先企業の経理内容についても保有株式数が多い銘柄を中心にしながら確認をおこなった。 毛利家文書については,貸金の状況に注目し,他人資本の側面から産業資本の形成に果たした役割を検討するための基礎データを整備した。また同家が関わった山口県関係の諸企業の資料について収集を行い,データの入力を行った。具体的には藤田伝三郎の起業した諸事業,百十銀行である。百十銀行については関連史資料を蒐集し,経理内容に関する諸データの入力を進めた。 さらに,山口県関係経済人に関わる諸資料について収集をはかり,毛利家と近代企業との関係を人脈を基礎に読み取る作業に取り組んだ。
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