研究課題/領域番号 |
17K03848
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研究機関 | 釧路公立大学 |
研究代表者 |
白川 欽哉 釧路公立大学, 経済学部, 教授 (20250409)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ザクセン / カメラ・映写機製造業 / 工業立地 / 企業集中 / 国際競争 / ツァイス・イコン社 / アグファー・ヴォルフェン社 / カール・ツァイス・イェーナ社 |
研究実績の概要 |
2019年度は、18年度に学内で拝命した学部長職に継続して従事し、学内行政に多くの時間を振り向けざるを得なかった。細々と研究は続け、6月上旬には、ドイツ資本主義研究会(開催校:専修大学)にて、拙著『東ドイツ工業管理史論』の合評会に参加し、その際に、18年度末に本学紀要に掲載された「1950年代のドレスデンにおける写真・映像機器工業の展開」についてその内容と翻訳の目的について簡単に紹介することができた(2017年の海外出張で入手した資料の抄訳と解説)。 また、本研究計画に関連するザクセンとテューリンゲンの東西統一後の現状分析を行った研究が『ドイツ経済 -EU経済の基軸ー』に執筆分担の章として掲載された。執筆の過程では、①19世紀末にプロイセン主導で誕生したドイツ帝国の工業化を語る際、この二つの地域は当時から無視できない存在であったこと、②それから150年近い年月のうちに二つの世界大戦と東西分裂と社会主義化を経験したザクセンとテューリンゲンは、今も先端技術の集積地域であり続けていることが浮き彫りになった。 さらに、20年3月中旬に、本研究計画に直接関連する写真・映像機器「フィルム」の生産に関する研究(ベルリン及びプロヴィンツ・ザクセン)の報告を準備した。ただし、周知の新型コロナの影響で、発表予定の研究会が中止となってしまった。 上記の業績のうち、とくに最後の「フィルム」製造業の歴史的展開については、2019年度中には、冒頭の理由もあって十分に成し遂げることができておらず、それへの対処の一環として「補助事業期間延長」(2020年度)を申請させていただいた。ご了承いただいたことに心から感謝申し上げたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究業績の概要」にも書いたように、学部長職(教務委員長、人事委員長、学生委員、FD委員、国際交流委員、障がい学生支援会議座長、その他多数を兼務)による学内業務負担増のため、研究への投入時間を減らさざるを得なかった。 そのため、2019年度は、以前からの蓄積のあった翻訳作業の発表や著書の執筆分担(本研究計画にも一部関連)で場をしのいだ。「概要」で紹介した「1950年代のドレスデンにおける写真・映像機器工業の展開」(本学『人文・自然科学研究』)と『ドイツ経済 -EU経済の基軸ー』(ミネルヴァ書房、2019年)がそれである。 しかし、本研究課題遂行中に浮上した課題(写真・映像機器工業と「フィルム製造工業=化学工業」と関連する史的分析)への投入は、ほとんど進められなかった。「機械機器工業の中心」としてのザクセン、テューリンゲン、そしてさらに「機械と化学工業の中心」としてのベルリンやプロヴィンツ・ザクセン(旧プロイセン領)への分析の射程の拡大は、本研究計画の実施から生まれた発想であり、それは次の研究テーマに活かしたいものでもある。 日本学術振興会のご配慮により、2020年度の研究延長をご承認いただいたが、新型コロナウイルスの世界的感染拡大の影響で、昨年度予定していた「ドレスデン」「ベルリン」での資料収集(ツァイス・イコン社関連、アグファ社関連)が、今年度も大変厳しい状況に追い込まれている。 遠隔授業へ対応という新たな教育課題はあるものの、役職任期が終了したため、20020年度はこれまでよりも研究に時間を割り当てることができるようになった。遅れを取り戻すべく史料の分析・考察を進め今後の成果に結び付けていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」にも示したように、今年度は資料収集のための海外出張は困難であると考えている(新型ウイルス対策での渡航制限、渡航自粛)。現地での第一次史料の収集は断念し、すでに入手した史料や購入した文献にもとづき、ディスカッション・ペーパー1本、論文1本、そして国内の研究会報告1本を目標に分析・執筆に集中することにしたい。 ディスカッション・ペーパーは、第二次世界大戦後の写真・映像機器工業(ザクセン、テューリンゲン)、論文は写真化学工業(フィルム製造:ベルリン、プロヴィンツ・ザクセン)の歴史(1880年代から20世紀初頭)、研究報告は写真化学工業の歴史についてまとめたい。 2019年度の業績となった『ドイツ経済 -EU経済の基軸ー』で執筆した統一後(1990年)の東部ドイツ経済において、同地域の経済を支えているのは、ザクセン、テューリンゲンの精密機器、自動車、その他のハイテク部門であることが見えてきた。それには、さらにプロヴィンツ・ザクセンから再編されたブランデンブルクやザクセン=アンハルトの機械やエネルギー部門も加わってくる。 今回の研究課題は、まさにそれらの地域を分析対象としているのだが、特定の部門における企業間関係(州と州との関係)の分析を進めてみると、単なる企業間の関係にとどまらない実都が浮き彫りになるのではないかと思うようになった。19世紀にまでさかのぼった近代史研究と第二次世界大戦後、ドイツ統一後の東部ドイツの現状分析(現代史)を重ねたてみると、「産業発展の歴史の重み」や「経路依存」と思わしき事実が確認できたと考えたからである。その「気づき」をもっと説得力あるものにするために、研究を積み上げて行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
学部長職(教務委員長、人事委員長、学生委員、FD委員、国際交流委員、障がい学生支援会議座長、その他多数を兼務)による学内業務負担増のため、研究への投入時間を減らさざるを得なかった。そのため、2019年度は、以前からの蓄積のあった翻訳作業の発表や著書の執筆分担(本研究計画にも一部関連)でその場をしのいだ。 上記の事情から、2019年度に予定していた海外出張による資料収集を計画を断念した。さらに論文執筆も難しい状況となった。なんとか、年度末に研究報告(2020年3月中旬)をしようと準備をしていたが、研究会は新型コロナウイルスの影響で中止、延期となった。 今年度は、役職任期を終えたため、昨年度使用しなかった補助金を文献購入に充てたいと考えている。不足文献は、19世紀末から20世紀前半のドイツ写真化学工業に関する研究書、論文と、第二次世界大戦後の東部ドイツ(ザクセン=アンハルト州)の化学工業地帯と関連企業に関する研究書である。 また、資料収集のための海外出張は新型ウイルス対策での渡航制限、渡航自粛)もあり、現地での第一次史料の収集は断念し、すでに入手した史料や購入した文献、そして今年度入手予定の文献・史料にもとづき、ディスカッション・ペーパー1本、論文1本、そして国内の研究会報告1本を目標に分析・執筆に集中することにしたい。
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