最終年度においては、海外出張を断念し(コロナ禍)、代わって外国語文献の収集に努め、既に入手した文献とともに考察をしたが論文の完成には至らなかった。研究に間接的に関わる所属学会からの委嘱課題(1920年代のドイツ産業合理化、体制転換と社会構造の変化に関するコメント、書評作成)の実施にとどまった。 研究期間全体(2017~19年度。22年度まで延長)においては、2017年度の海外出張の準備と実施、それらの成果(研究ノート1本、口頭発表2本)、その後の2年半における第一次史料の一部紹介、著書(研究期間の前年度に刊行。本研究の着想に直接的に関連)関連の口頭発表、本研究の最終段階に予定していた東西ドイツ統一後のザクセン、テューリンゲン工業に関連する編著書所収の論稿など、成果の積み上げを行ってきた。しかし、2018~19年度の学部長時代の多忙により、研究にブレーキがかかり、さらにコロナ禍によって、19年度に予定していた海外出張が実現できず、洋書文献の購入に代替せざるを得なかった。 延長期間の2020~22年度は、体調不良も相俟って研究の勢いを失い、口頭発表や書評を通じて、研究の大前提となる東ドイツの政治史、戦前のドイツ産業合理化に関する学習、統一後のドイツとの比較を念頭に引き受けた口頭報告や書評の作成にとどまった。もちろん、本研究課題のための文献収集は進めてきたので、それを用いてディスカッションペーパーや研究ノートを、期間終了後ではあるが2023年度中に完成させたい。具体的には、20世紀初頭からドレスデンのカメラ製造業の企業集中と世界進出、第二次世界大戦後の東ドイツでの「生き残り」とその後の展開についてである。 なお、本研究の副産物として、カメラや映写機(機械工業)に不可欠のフィルム製造業(化学工業)の分析の端緒をつかむことができたことを付記したい。
|