研究課題/領域番号 |
17K03849
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
唐澤 達之 高崎経済大学, 経済学部, 教授 (10295438)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 給水事業 / 18世紀 / ロンドン / ウェストミンスタ / チェルシー給水事業会社 |
研究実績の概要 |
近世ロンドンにおいて設立された株式会社形態とる代表的な給水事業会社のひとつであるチェルシー給水事業会社Chelsea Waterworks Companyについて、昨年来進めてきた会計記録のデータベース化と理事会記録の転写の作業を踏まえて、これらの徹底的な分析を進めるとともに、これらを補完するために必要な史料の収集をロンドン市公文書館において行った。 チェルシー給水事業会社は、当社の給水エリアであるウェストミンスタ地区の富裕層が主たる出資者及び経営者となっており、自らが居住する地区における都市開発に対する関心と、17世紀末以降進行しつつあった同地区における貧困層の比重の相対的な高まりと社会的退廃に対する危機意識を背景に設立されており、ローカルで共同体的な利害が反映されていた。また、給水サービスの提供は事業会社と利用者の間の私的な契約によって成立するものであったが、顧客管理の技術的制約もあって、直ちに住民たちの共同体的な利用を排除することはできなかった。以上のように、近世ロンドンの給水システムの転換のプロセスは、その管理運営が都市自治体=都市共同体によるものから私的な事業会社によるものへと直ちに転換していったわけではなく、その転換を支える技術革新の側面も含めて、漸進的なものであったことが明らかになった。 これらの研究成果は、2019年6月に開催されたイギリス都市農村共同体研究会において報告するとともに、報告内容の一部をまとめたものは、比較都市史研究会の学会誌『比較都市史研究』(2019年12月刊、査読あり)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
勤務先で副学長職にあり、学内業務のために作業が計画通り進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長することができたので、チェルシー給水事業会社の経営分析を、すでに終えた1800年までの分析を踏まえて、19世紀半ばまで拡張し、長い18世紀における当社の動向をトータルに把握していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
勤務先で副学長職にあり、学内業務のため研究がやや遅延したため。翌年度は、研究図書の購入に充てる予定である。
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