2022年度は、米国における物価高騰と予算残額不足とを勘案して、海外調査をWebアーカイブ調査及び在米の研究協力者を通じた資料調査に代替するとともに、国立国会図書館および各大学図書館等の文献調査を行った。具体的には、各州の歴史協会等が設置する資料アーカイブ、米国議会図書館が統括する地方新聞の歴史的アーカイブ、米国国立文書館(NARA)のアーカイブ資料、セントルイス連銀のFRASER他をリモートで利用した。 研究のテーマである、米国預金保険制度における銀行破綻処理手法については、ネブラスカ州、カンザス州、ワシントン州について資料収集(メールによる複写資料取寄せなど)を行い、分析を実施した。預金保険による銀行破綻処理方式については、ペイオフ(保険金支払い方式)、営業譲渡方式、オープンバンク・アシスタンス方式、ブリッジバンク方式が主なものであるが、各州の預金保険による破綻処理の多くがこれらの方式ないし、その変形の方式を採用していたことが分かった。これらの方式は、預金保険制度の存在抜きに考えられないものであるが、その方式がどのように生み出されてきたのかについては資料がはっきりせず、さらに調査を進めているところである。当該研究課題については、未解明部分を多く残すものの研究全体を総括するため、研究報告書を準備しているところである。 また、州法における預金保険制度成立および運営・終焉の背景には、米国独特制度を支える思想、すなわち反連邦主義、反独占、ポピュリズムなどの存在が大きかったとする論点を整理するため、この点に関する論文を執筆し発表した。
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