最終年度にはまず第2年目の研究課題である「ソヴェト農村における家畜の死亡・屠畜と国営家畜保険:1879-1957年」についての論文を執筆し、学会誌に発表した。その主な内容は次のとおりである。 ソヴェト農民は社会主義体制の下でも家畜保険の仕組みを巧みに利用し、しばしば市場価格を上回る資金を家畜保険から受け取っていた。そのため、家畜の死亡や損失はソヴェト農民経営にとって経営の破綻と衰退をもたらす悲劇ではなく、むしろしばしば経営をリセットできるチャンスとして受け止められていた。一方、ソヴェト政権は、家畜保険事業を通じて、農民保護という建前の目的の他に、農民経営への恒常的な抜け道の提供と農民間におけるリスクヘッジ、そして国家財政の保全という4つの目的を達成していた。 次に、第3年目の研究課題である「ソヴェト農村における作物の災害、再播種と国営作物保険」について史料整理を行いながら、論文を執筆し、近日中に学会誌に投稿する予定である。 さらに、3年間の研究成果の集大成として『ソヴェト農村における国営農業保険:火災・家畜・作物・生命』という本を執筆し、出版を計画している。 最後に、ソヴェト農村・農民研究史において全く新しい研究であるため、国際交流を深めると同時に、海外の学会誌への投稿および欧文での書籍の出版を準備している。
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