研究課題/領域番号 |
17K03856
|
研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
浅井 良夫 成城大学, 経済学部, 教授 (40101620)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 世界銀行 / 高度経済成長 / 経済復興 / 開発 / 開発援助 / 世銀借款 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は、1950~60年代に世界銀行(国際復興開発銀行、IBRD)が行った対日借款の歴史実証的な分析を通じ、戦後復興期から高度経済成長前半期における日本の開発の意義とその歴史的特徴を明らかにすることにある。本年度は、研究史のサーベイおよび一次史料の収集・分析を行った。 研究史のサーベイについては、第1に、創設から1970年までの世界銀行の歴史を、1954年、1973年、1997年に刊行された3種類の世銀の公式の歴史、初期の中南米に対する世銀融資に関するAlaceviciの研究等を検討して、その全体像の把握に努めた。第2に、世銀対日借款の対象であった鉄鋼業、電力産業、石炭鉱業、機械工業、農地開墾、鉄道に関する基本的な文献(研究書・論文・社史・事業史等)を検討した。第3に、世銀借款と関連が深い財政投融資に関する文献(同時代の文献および歴史研究書)を分析し、世銀借款と国内の財政・金融との関連を調べた。 一次史料の収集と分析に関しては、第1に、2017(平成29)年8月にワシントンの米国立公文書館(NARA)、テキサス州オースチンのジョンソン大統領図書館を訪れ、関連史料の収集に当たった。第2に、外務省外交史料館等の公文書館および図書館において、史料の収集を行った。とりわけ、世界銀行の対日借款に関する豊富な史料が所蔵されている外交史料館の資料収集に努めた。第3に、世界銀行のアーカイブと連絡をとり、史料の取り寄せおよびインターネット上の史料の収集を行った。 以上の作業を通じて、つぎの成果を得ることができた。第1に、これまでほとんど注目されていなかった1970年以前の世銀の活動の全体像が把握できた。第2に、世銀の融資対象であった事業のうち、鉄鋼、機械工業、石炭産業、開墾事業について、一次史料にもとづいて、世銀借款の実態をその役割を解明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画発足時に、平成29年度の研究実施計画として掲げたのは、研究史のサーベイと一次史料の収集であった。 このうち研究史のサーベイについては、ほぼ予定通りに進めることができた。世界銀行の歴史に関しては、必要な文献を集め、検討を済ませた。世銀が融資対象とした事業の検討については、鉄鋼、機械工業、石炭産業、開墾事業に関する検討作業は完了したが、電力、鉄道については、まだ検討作業が残っている部分がある。 一次史料の収集については、第1にアメリカの調査を行い、世界銀行アーカイブ、米国立公文書館(NARA)、ジョンソン大統領図書館の史料の収集を順調に行うことができた。平成29年度の実施計画では、米国立公文書館およびアイゼンハワー大統領図書館の調査を予定していた。しかし、同図書館に関連史料が所蔵されているかどうか不明であること、地理的にアクセスが困難であることから、予定を変更してアイゼンハワー大統領図書館の調査は行わず、平成30年度に予定していたジョンソン大統領図書館(テキサス州オースチン)に調査先を変更した。ジョンソン大統領図書館においては、所期の目的を達成することができた。なお、米国立公文書館等の海外調査は引き続き平成30年度も行う予定である。 第2に、国内の一次史料調査に関しては、外交史料館、国立公文書館等の史料館および図書館の調査をほぼ予定通り行うことができた。ただし、予定していた北海道公文書館の調査は、所在史料の確認が出来なかったことから、見送り、今後実施するかどうかは平成30年度に検討することにした。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度に予定していた研究計画を、ほぼ予定通り実施することができたので、今後は、ほぼ平成30年度、平成31年度の研究実施計画に沿って研究を行う。 第1に、平成29年度に引き続き、アメリカ史料調査を実施する。訪問先は、米国立公文書館(NARA)と他の1箇所を予定している。他の1箇所については、フーヴァー・インスティテュート、ニクソン大統領図書館、アイゼンハワー大統領図書館などが候補であるが、具体的にはまだ決定していない。 第2に、平成29年度に引き続き、国内の史料を収集し、分析する。調査先としては、国立公文書館、外務省外交史料館、日本銀行、北海道公文書館等を予定している。また、大学に所蔵されている米国立公文書館のマイクロ資料を利用して、研究テーマに関連する史料を集める。さらに、国立国会図書館にアイゼンハワー大統領関係のマイクロ史料が所蔵されていることが判明したので、この史料についても調査を行う予定である。 成果は、順次、学術論文、学会発表の形で公表して行きたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年夏の海外調査で、当初予定していた調査が完了しなかったため、平成29年度内(平成30年1月~3月)に追加の海外調査を計画していた。しかし、事情により追加調査の実施に至らなかった。それにより、海外旅費に予定していた経費に未使用額が発生したことが主たる理由である。 平成29年度に予定していた追加の海外調査については、平成30年度に計画している調査とあわせて実施する予定である。また、研究に必要な文献等の購入も進める。
|