本研究の課題は、世界銀行(国際復興開発銀行、IBRD)が戦後復興期から高度経済成長期にかけて実施した対日借款の歴史実証分析を通じて、戦後日本の高度経済成長の歴史的意義と、その国際環境について、新たな視点からの考察を行うことにある。 本年度は研究の最終年度であるので、過去2年間の研究を取りまとめるとともに、つぎの研究への橋渡しとなる試行的な研究を進めた。 研究の取りまとめとしては、対日世銀借款を、1947~70年に実施された先進国に対する世銀借款のなかに位置づける作業を行った。今日では発展途上国のための国際援助機関として知られる世界銀行が、1960年代まで、先進国向け融資を積極的に展開していた実態を、世界銀行等の一次史料を用いて明らかにした。さらに対日世銀借款を、初期のフランス等4か国に対する復興借款や、日本と同時期に行われたイタリア、オーストラリア等に対する借款と比較する作業を通じて、対日借款の特質を把握し、その歴史的背景を解明した。 今後の研究につなぐ作業としては、1960年代に復活した国際資本市場との関連で、対日借款の検討を行った。世界銀行は国際資本市場の復活を目標に、加盟国に自力での市場からの資本調達を促した。しかし、それは国際資本移動規制を容認するブレトンウッズ体制の理念と矛盾した。世界銀行が、ブレトンウッズ体制が抱える矛盾と、いかに向き合ったのかを、本研究では対日借款を対象に明らかにした。1960年代の米国・欧州資本市場で重要な位置を占めた日本を検討したことは、今後予定している、1970~80年代の国際金融・資本市場に関する共同研究のための糸口になると考えられる。
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