研究課題/領域番号 |
17K03858
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
竹田 泉 成城大学, 経済学部, 教授 (20440216)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 繊維産業 / アイルランド / 経済史 / 文化史 |
研究実績の概要 |
本年度は、以下二つの点に焦点を絞って研究をおこなった。第1に、繊維産業史を繊維横断的に(異なる繊維の製造業を相互に連関するものとして)捉えること、第2に、繊維産業史を通じて文化史や社会史を経済史研究にどのように取り込むことができるかを探ること、である。具体的な活動としては、文献資料調査、織物現物調査、先行研究の分析、研究会の開催である。 特に重点的におこなったのは研究会であり、他研究者との交流を通じて、研究代表者一人ではおこなえない領域の知見を得ることができた。上の第1の点については、3月におこなった国際シンポジウムにおいて、単一の繊維のみをみる従来の繊維産業史の限界を参加者のあいだで確認し合い、研究代表者が主に対象とするアイルランドの亜麻(リネン)を綿や絹、さらにはレーヨンなどの人工繊維などとともに総合的に理解する枠組みについて議論することができた。 また、第2の点に関しては、6回の文献検討研究会を開催した。主に取り上げたのは文化史の文献であるが、その分野における近年の研究動向について批判的な分析をおこなった。繊維製品(モノ)の具体的な側面に着目する研究は近年盛んであるが、そうしたモノに関わる具体的なヒトについても、どのように経済史研究に取り込むかについて考察を深めることができた。 現物織物調査に関しては、特に研究対象時期につくられたアジアとヨーロッパの織物を実際に観察し、比較検討することができた。特に、色や手触りといった織物の特徴を生み出すために、絹、亜麻、綿にどのような加工がなされたかについての理解を深めることができた。 今年度の最大の成果は、モノを対象とした本研究にヒトの視点を導入することの有効性を確認できたこと、およびそれをどのように導入すべきかについて、来年度以降の研究の方向性を定めることができたことにあるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の遅れを大きく取り戻すことができた。特に、研究会は定期的におこない、先行研究調査や他研究者との交流が大きく進展したことは上の研究実績概要に記した通りである。 こうした活動を通じて、来年度以降の研究の方向性を明確にすることができたことは今年度の第一の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、研究計画調書に記したとおりに今後も研究をおこなう予定である。しかし、上の研究実績概要に記したように、新たにヒトの視点を導入するために、若干の研究方法の変更が必要となる。具体的には、先行研究分析や資料調査に重点を置くことになるだろう。 今年度は2度の海外調査をおこなったが、日数を十分に取ることができなかったために計画通りに進んでいない部分がある。来年度以降にできる限りおこないたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度残額が生じてしまったのは、前年度の残額を本年度以降の研究で段階的に使用しているためである。本年度は概ね順調に研究をおこなうことができた。
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