コロナ禍の影響下にあって、当初延長期に実施を予定していた英国公文書資料館(PROI)、英国国立博物館等での英領期ビルマ、ボルネオを中心とした資料収集の研究計画を断念せざるをえなかった。史料の性質上、実際に訪問をして該当する史料の探索が必要であり、今後長期的に、当該地域の史料収集分析に取り組んでいきたい。 本年度は、大きな制約があるなか、比較的資料の収集が進んでいる英領期マラヤに焦点をあて、研究協力者のChoy Keen Meng博士が本学経済学部に客員教授として滞在していた期間(11月中旬から翌年2月)を活用して、論文投稿用の長期経済統計の整備、推計を行なった。 段階的な作業として、英領期海峡植民地(Straits Settlments) に焦点をあて、特に時系列なデータの入手が困難な1860年以前で入手可能な生活必需品目(食料、飲料、服飾等)の小売価格、輸入価格、労働賃金等に関連した資料の探索を行なった。幸いシンガポール国立図書館にはデジタルで閲覧可能な新聞等の資料が存在しており、関連する資料の収集に努めた。これにより小売価格が存在していない物品についても一定のマージン等を加算することによって推計データの作成を進めることが可能となった。賃金に関するデータについては、各種資料の探索を行なったが、19世紀前半の時系列のデータを入手することは困難なため、入手可能な期間に限定して、ベンチマークとなるような生活水準推計を行い、また他の主要国・都市との比較を行なっていくことを今後検討している。 研究期間全体としては、2018年にECONOMIC HISTORY OF DEVELOPING REGIONSというジャーナルから英領期シンガポールの生活水準に関する論文が掲載され、また当該研究に関連した国際会議での各種報告を積極的に行うことができた。
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