研究課題/領域番号 |
17K03863
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
前田 廉孝 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (90708398)
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研究分担者 |
大豆生田 稔 東洋大学, 文学部, 教授 (20175251)
野田 顕彦 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (80610112)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 日本経済史 / 計量ファイナンス / 時変計量経済モデル / 大阪堂島米穀取引所 / 情報効率性 / 米穀政策 / 堂島米市場文書 / 取引所経営 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績は,以下3点に集約できよう。 第1に,研究代表者(前田)と研究分担者(大豆生田)は,大阪堂島米穀取引所の経営に関する一次史料を調査した。具体的には,関西大学図書館所蔵堂島米市場文書に含まれる営業報告書(貸借対照表,損益計算書,利益処分,損益計算書),取引関連史料(取引高等に関するデータ),役員会議事録,不動産取得・貸借関連史料を主な対象とした。 第2に,研究代表者(前田)と研究分担者(野田)は,1914~39年における大阪堂島米穀取引所の価格形成機能を分析した昨年度の成果を国内外の学会で報告した。具体的には,"Discretion versus Policy Rules in Futures Markets: A Case of the Osaka-Dojima Rice Exchange, 1914-1939"との題目でWestern Economic Association International (Vancouver, Canada), World Economic History Conference (Boston, US), 日本経済学会(東京)において報告し,国内外の研究者らと有意義な議論を交わすことができた。 第3に,研究代表者(前田)と研究分担者(大豆生田)は,上記第1の作業で収集した史料を用い,1913~39年における大阪堂島米穀取引所の経営動向を考察した。この考察より,米穀政策・米価調整政策の強化による取引規模縮小へ対応するために戦間期の同取引所は,先渡市場の創設,有価証券投資と不動産投資の拡大を実施し,先物取引のみに依存しない経営へ向けた事業の多角化を進めたことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度交付申請書(様式D-2-1)で示した各年度研究実績計画において上記【研究実績の概要】に示した3点は,それぞれ第1と第3が平成31年度実施予定の研究,第2が平成30年度実施予定の研究として位置付けられる。これらのうち平成31年度実施予定の研究を本年度に先取りして実施した理由は,既に平成29年度研究実施状況報告書(様式F-7-1)の【今後の研究の推進方策】に明記した。すなわち,平成29年度交付申請書(様式D-2-1)提出時点では平成30年度に実施を予定していた「大阪堂島米穀取引所における取引仲買の行動変化」を解明するためには,同時点で平成31年度に実施を予定していた「大阪堂島米穀取引所の経営動向」が解明される必要があると平成29年度末に判断した。その判断に従い,平成29年度交付申請書(様式D-2-1)提出時点に策定した計画のうち平成30年度は,一部を先送りし,一部を先取りすることで研究を進めた。以上の状況より現時点までに本研究課題の進捗状況は「(2)おおむね順調に進展している。」と判断しうる。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度には以下3点の作業を進めたい。 第1は,上記【研究実績の概要】において平成30年度研究実績のうち第3として示した大阪堂島米穀取引所の経営動向に関する考察結果を学術論文として投稿することである。それに向けて平成31年度は,10月に慶應義塾大学で開催される経営史学会第55回全国大会で報告し,その後に適切な査読付き国際学術誌へ投稿する予定である。 第2は,上記第1の点を踏まえ,大阪堂島米穀取引所における株主の異動を検討することである。同所株は戦前・戦間期日本の代表的な株式銘柄であり,その株主を網羅したデータベースが平成30年度までに約7割完成した。このデータベースの構築を進め,平成31年度中に分析に着手したい。 第3は,以上2点の研究成果を踏まえ,大阪堂島米穀取引所における取引仲買の行動変化を分析することである。この課題に即した分析に必要な史料の収集は平成30年度までに完了しており,上記第2の研究課題と併行して分析を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
史料調査が当初の計画より順調かつ効率的に進展し,出張に要する旅費の支出が計画額より減少している。但し,最終年度となる次年度(平成31年度)には,これまでの研究成果を報告する機会の増加が予想され,再び出張旅費の増加が想定される。そうした旅費等に次年度使用額は充当し,有意義に活用したい。
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