研究実績の概要 |
本年度の研究実績は,以下2点に集約できよう。 第1に,研究代表者(前田)と研究分担者(大豆生田)は,関西大学図書館所蔵堂島米市場文書より1919-39年における大阪堂島米穀取引所の経営動向を考察した。1925年の米穀法改正以降に進展した同取引所の経営悪化は,1932年の米穀統制法制定以降に深刻化した。以上の考察結果は,別の観点から捉えれば,1921年の米穀法制定は取引所経営を直ちには悪化させなかったことを意味する。かかる考察結果は,1925年の米穀法改正と1932年の米穀統制法制定を米価形成における情報効率性悪化の主要因として挙げたMikio ITO, Kiyotaka MAEDA, Akihiko NODA(2017), "Discretion versus Policy Rules in Futures Markets: A Case of the Osaka-Dojima Rice Exchange, 1914-1939," Quantitative Finance Papers [arXiv: 1704.00985]及びMikio ITO, Kiyotaka MAEDA, Akihiko NODA(2018), "The Futures Premium and Rice Market Efficiency in Prewar Japan," Economic History Review, 71(3), pp. 909-937とも整合的であり,1925年以降における内地米穀市場の質的変容を指摘できよう。 第2に,研究分担者(野田)は株式市場にまで考察の射程を拡大し,1878年から1943年までにおける株価形成の情報効率性を検証した。そして,米価形成と同様に株価形成の情報効率性もまた通時的に変動していた史実を計量分析より解明した。
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