研究課題/領域番号 |
17K03866
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 剛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00334300)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 経営組織 / 会社形態 / 株式会社 / 会社法 |
研究実績の概要 |
初年度に当たる本年度は、とりわけ日本を中心に、各国の会社形態の発展において大きな変化が起こった時期を取り上げ、その時期において人々が会社形態をどのように受容したかを検討した。まず、日本に関しては、第二次世界大戦の敗戦及びその後GHQの下で実施された1950年改正に注目し、その前後における人々の認識の変化について、「会社形態の濫用」という当時の会社法学者の議論を利用しながら検討した。その結果、戦前期には株式会社はより規模の大きい企業の資金調達を主たる目的として利用されていたのに対して、戦後直後には信用の獲得のために株式会社を利用し始めたということを確認した上で、その後株式会社形態は経営の近代化と合理化のために利用されるようになったことを明らかにした。また、財閥における会社形態の利用とガバナンスについても検討をお来ない、財閥本社における財閥本社による専門経営者のコントロールの程度及びそれを支える会社形態の利用の方法と、財閥本社による財閥内各社のコントロールの程度には相補性があることを指摘した。さらに、『企業会計』誌における連載の中で、日本における会社法の歴史にさかのぼり、人々が会社形態や会社機関をどのように認識していたかについて、1890年の旧商法、1899年の新商法、その後の戦前期の改正、1950年改正等で区分しながら、当時の会社法の教科書などを利用して論じた。また、中国に関しては会社法の発展を整理し、いくつかの転換点を見出した。 さらに、派生的な研究として、ベンチャー企業における資金調達やそれと会社制度との関係について論じた。また、日本の多国籍企業のマネジメントについて、これを各国の法制度との関係やそのような状況における地域本社の利用について検討を行った。さらに、日本と米国における製品リスクのマネジメントについても比較検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本においては研究は当初の計画以上に順調に進展し、とりわけ戦前期から戦後の1950年商法改正後の時期に関して、制度の変化に応じて人々が会社制度をどのように利用してきたのかについてはある程度明らかにできたものと考えている。また、当時の教科書や政府の刊行物、議会の議事録、新聞記事等を利用しながら、人々がどのように会社制度を認識しているかについてもある程度明らかにすることができるようになっており、この意味でも日本に関する研究は順調に進んでいる。一方で、中国に関してはまだ予備調査を終了し、いくつかの転換点(中華民国期における会社法の導入等だけでなく、1950年代における私営企業に対する政策の転換までも含めて)を見出したものの、まだ会社制度の認識や利用に関しては踏み込めておらず、この点では予定より遅れている。日本における研究の進展と中国に関する研究の進展の度合いを考えると全体としては予定通りに進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、日本の研究の中で見出された研究手法、すなわち当時の教科書や(例えば教科書政府刊行物、議会の議事録や新聞記事等を利用して会社制度に関する人々の認識を明らかにする手法を利用し中国における会社制度の利用と認識の変化を把握するとともに、その手法を精緻化して韓国やベトナムに関する分析も進めていく。とりわけ、韓国については植民地期のデータのみならず新聞等に関するデータベースも利用可能であるため、戦前期の韓国(朝鮮)を中心に分析を進め、また手法の一層の精緻化も図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本に関する研究が進展したことに伴い、中国に関する研究がまだ情報の整理にとどまり、調査等ができていなかったため。次年度、中国に関する研究の進展に伴い調査等を進める予定である。
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