研究課題/領域番号 |
17K03872
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
永吉 実武 静岡大学, 情報学部, 准教授 (80620616)
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研究分担者 |
中村 潤 中央大学, 国際経営学部, 教授 (80532994)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 失敗からの学び / 知識・技能伝承 |
研究実績の概要 |
企業や組織において「失敗からの学び」を成功させているところは少ない。本課題研究では、経営パフォーマンスの向上に向けた組織的な「失敗からの学び」の成功のために、日本企業の経営者はどのような仕掛け(制度・ルール・情報システム)を構築すればよいかを明らかにする。これまでに、 (1)組織的な「失敗からの学び」を促進させるためには、組織的な失敗の原因を作った当事者がその要因を明らかにするために、要因解明作業に協力を行い情報・知識の共有を行う必要があるが、その当事者の「恥の気持ち」「後ろめたさ」があるがゆえに、情報・知識の共有が進まないということがわかってきた。 (2)その阻害要因を克服するための要因(促進要因)として、組織的な「失敗からの学び」の合理性の理解を促進すること、仲間に対する共感の気持ちを高めること、などがわかってきた。 (3)阻害要因を克服するための仕掛けとして、失敗の当事者が失敗からの学びの取り組みを推進することや「失敗からの学び」の成果を組織的に共有するためにITを用いた情報共有を行うことで組織とすることなどもわかってきた。さらに、失敗を繰り返さないようにするための知識の共有に際しては、組織全体に一斉に知識共有をするよりも、特定の仲間に対する「打ち明け」を行うことにより知識を拡散させることの有効性が示唆された。 (4)また、組織全体のパフォーマンスの向上の観点から、組織的な「失敗からの学び」をいかに新たなイノベーション につなげるためにはどのようにすれば良いのかや、組織的な失敗らの学びを上手くこなす組織文化とはどのようなものなであるか、また失敗を繰り返すことにより技能を高めた技師などがどのようにしてその技能(暗黙知)を伝承しているのかについて視線計測を用いながらの研究に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、3ラウンドの定性データ・定量データの収集を着実に実施し、その分析結果を考察し、対外発表を行ってきている。この点において、順調に進展している。 一方で、当初は多くの組織を広く観察し、データ収集を行う予定であったが、「失敗からの学び」という対象特性ゆえに、多くの企業を浅薄に考察するよりも、特徴的組織を深く考察することから得られる示唆の方が有益であると考え、研究対象を特定組織に焦点を絞る方針とした。この点において、当初計画とは異なっている。 一方で、焦点を絞ることにより多角的に考察することができたり、組織文化やイノベーション 研究、技能伝承に関する考察に発展性を見出したりすることができた。 これらを総合的に判断すると、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
組織的な「失敗からの学び」が既存知識の深堀に有効であるか、もしくは新たな知識の探索に有効であるかの観点に基づき、昨年度データ取集を行った。今年度は、このデータを多角的な観点から統計手法等を用いて分析を行う予定である。そして、その分析結果を基づいて研究協力企業の経営者等とディスカッションを行ったり、研究者間の意見交換を繰り返すことにより考察するとともに、これらを研究論文にまとめ発表を行う。 さらに、失敗を繰り返すことにより技能を高めた技師などがどのようにしてその技能(暗黙知)を伝承しているのかの観点から、視線計測や動作捕捉などにも取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の発表につき、今年度中に国際会議への投稿を行ったが、採択結果の通知および発表が次年度となったため、繰越額が発生した。 次年度に国際会議にて発表を行う予定であり、このための参加費・旅費等で支出する予定である。 また、失敗を繰り返すことにより技能を高めた技師などがどのようにしてその技能(暗黙知)を伝承しているのかの観点から、動作捕捉に向けた準備に支出する。
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