研究課題/領域番号 |
17K03874
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
小野 善生 滋賀大学, 経済学部, 教授 (80362367)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リーダーシップ / マネジメント / 社員満足 / 経営理念 / 制度化 / 企業家行動 / 環境適応 / 事業変革 |
研究実績の概要 |
今年度の研究実績としては、学術論文2本を公刊し学会発表(国際学会)1回を実施することができきた。 学術論文の1本目は、「社員満足を追求する経営「おもてなし経営企業選」受賞企業の比較事例分析」『彦根論叢』417号(頁4~23)である。本論文では、これまで実施した3社のフィールドワークに基づく事例を比較事例分析を行った。昨今、注目されている社員満足を実現するために必要な経営者のリーダーシップそしてマネジメントとは何かについて考察している。結論の概要としては、リーダーシップの観点からは、すべての社員が共有する理念を明確にし、価値観の拠り所を創造する。そして、その価値観を実現するためのマネジメント上の諸制度を整える。このような社員の心理的な側面に訴えるソフトの要素と制度の整備というハードの要素をバランスよく展開することが社員満足を追求する経営には不可欠であるとの結論を導きだしている。 2本目の学術論文は、「酒造業経営者の企業家行動 滋賀県の日本酒メーカーにおける事業変革に関する研究」『滋賀大学経済学部研究年報』25巻(頁49~ 76)である。本論文では、滋賀県の中小酒造業経営者ならびに社員への聞き取り調査を主とするフィールドワークを通じて明らかになった中小酒造業経営の実態および既存事業からの組織変革について考察している。従来の中小酒造業者は、大手衆生メーカーへのOEMを主とするビジネスモデルであったが、国内の日本酒消費量の減退によって大手酒造メーカーのOEMの事業が成り立たなくなり、事業変革しなければならない状況となった。そのような環境変化の中で、高級酒製造へと活路を見出して事業転換することによって環境適応していることが明らかになった。 ちなみに、国際学会の発表に関しては、2本目の学術論文の内容を英訳し、プレゼンテーションの形式にしたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗状況に関しては、フィールドワーク、文献研究、データ分析、成果の発表、いずれにおいてもおおむね順調に進展している。フィールドワークに関しては、確定していた調査協力先へのフィールド調査は終了した。また、今年度においては、昨年度より開始した地元彦根の地場産業であるバルブ産業へのフィールドワークが中心となる。滋賀バルブ協同組合の全面協力のもと、調査協力さきの調査日程の協議を行っている。 文献研究については、酒造業、バルブ産業、双方の既存研究、さらには、業界誌、社史といった関連書籍を調達し情報収集できるベースは、ほぼ整っている。現在は、入手した研究情報から本研究に必要な情報をピックアップして編集を行っている。 データ分析については、インタビューデータのコーディングを実施している。ただ、インタビューデータの文書データ化については、やや進捗が遅れているので、この点は重点的に進める。 成果の発表については、今年度は酒造業とバルブ産業に関するこれまでの研究成果を論文という形で公表する予定である。文献研究、データ分析の結果を反映して執筆していく。学会発表については、昨年実施した国際学会での発表を続けて実施できるように最善を尽くす。 以上の点から、これまでの研究の進捗に関してはおおむね順調に進展している。課題としては、インタビューデータの文書データ化の進捗が当初の予定より若干遅れている。この点をてこ入れして、研究全体の進捗を高めていく。また、成果については、論文、学会発表に加えて、最終的に目指す書籍化についても長期的な計画として今年度から組み込んでいく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策に関してであるが、まずフィールド調査では、酒造業への調査に関しては予定していた調査協力先への調査は終了したのですが、必要に応じて新たな調査先を確保する。また、彦根バルブ産業へのフィールド調査に関しては、滋賀バルブ協同組合の全面協力のもと進めており、本年度における調査協力先については協同組合との協議を通じて6月から本格的に調査対象先を絞り、決定次第進める予定である。 文献研究に関しては、主要論文、文献、および関連資料の収集は順調に進んでいる。なお、情報収集に関しては、文献研究と同時並行で必要に応じて逐次実施する。一方、文献レビューに関しては、酒造業の経営学的観点の既存研究と経営的関連の既存研究の2つのアプローチから進めていく。一方、彦根バルブ産業については、バルブ産業の経営学的視点の研究はこれまでのところ確認することができなかった。研究関心からは、地域産業論や産業集積論の既存研究をレビューしていく。それに加えて、企業家的視点に基づいて分析する方針なので、企業家論についてもレビューしていく。 データ分析については、すでに実施したインタビュー調査の文書データ化および文書データのコーディングの作業を同時並行で進めていく。 最後に成果についてであるが、前年に引き続き中間報告的な位置の論文の執筆および研究発表を計画している。内容面については、フィールド調査、文献研究、データ分析の進捗状況に依存するが、酒造業に関しては昨年度は滋賀県の酒造業者のデータのみを利用したが、今年度は比較対象として実施した高知県の酒造業者のデータも併せて分析した結果のものを発表する。次に彦根バルブ産業については、産業集積のれ歴史的側面と根治におけるビジネスモデルを比較検討したものを発表する予定である。また、研究発表については、これらの内容を反映したものを予定している。
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