研究実績の概要 |
最終年度に実施した研究の具体的な成果については、かねてよりフィールド調査を実施していた滋賀県と高知県の中小酒造メーカーの調査結果に基づく研究成果を「酒造業経営者の変革行動─滋賀県と高知県の中小酒造メーカーの事業変革に関する研究─」として『滋賀大学研究年報』第26巻において交換することができた。本研究の意義としては、2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて以降に輸出高を大幅に伸ばした日本酒の業界においていかなる経営上の変革がなされているのかを明らかにしたことにある。 国内の日本酒市場はおよそ1,400社からなるが、大企業および大企業に準ずる企業が10社程度を除き、残りのメーカーは全て中小メーカーからなる特徴を有している。日本酒市場は国内消費の減退から中小メーカーの淘汰が進む一方で、中小メーカーの中には高級酒路線に転換して生き残りを図っているところもある。本研究においては、高級酒路線への事業変革を実行プロセスの詳細を明らかにしている。本研究成果は、自社ブランドを高めるために製品、流通、販売促進といった戦略の転換とテロワールを活かしたブランドのストーリーを構築することがグローバルニッチ戦略を実施するにあたって必要であるということ明らかにしたということで、これからの中小企業に求められるグローバルニッチ戦略に関して大きな示唆を与えている。 同じく地方に本拠地をおく中小企業のプロジェクトとして実施している滋賀バルブ産業の事業発展に関する調査に関しても継続的に実施ている。すでに調査を終えたバルブメーカー3社の事業の仕組みを事例間比較した論文を滋賀大学経済学部紀要『彦根論叢』に上梓することになっている。6月公刊予定である。 いずれの調査プロジェクトも継続することになっているが、現状は新型コロナウイルスの影響で調査が中断している状況である。終息しだい再開することになっている。
|