研究課題/領域番号 |
17K03880
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
岩佐 和幸 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 教授 (40314976)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 脱ファスト化 / グローバル化 / 外国人労働力 |
研究実績の概要 |
今年度は、アパレル周辺産地の中から高知県に焦点を絞り、アパレル・ファッション関連企業・団体調査を通じて、ファスト化をめぐる影響調査を行った。具体的には、大手スポーツ・アパレル企業M社の協力企業と 、大手ジーンズ・メーカーB社の元子会社を中心に調査を実施した。前者については、5年前にも調査を行っていたことから、当日の状況と比較分析を実施した結果、大手メーカーとの協力深化の傾向が浮かび上がった。具体的には、グローバル戦略の強化と海外生産の再編・シフトを指向するとともに、他方で国内生産については外国人労働力の導入を通じた経営維持を図りつつも、総体としては縮小傾向に向かっていることが浮かび上がった。また、後者についても、5年前の調査との比較分析を行った結果、独自ブランドの構築等を通じて再生をはかる路線に変わりはないものの、生産に不可欠な労働力供給源をよりグローバルに拡大している状況が明らかになり、ファスト化状況への労働力面での対応策がより明らかになった。 一方、ファスト化の影響によってアパレル企業を組織している産地組合が弱体化している背景として、産地が外的要因に沿って形成・再編・崩壊する歴史的過程が見えてきた。そこで、国会図書館やJETRO、高知県庁、高知県産業振興センター、オーテピア等で資料収集屋関係者ヒアリングを実施し、産地の歴史資料の発掘作業を実施した。その結果、高知県内では高度成長期より外来企業の進出や契約生産を通じて産地形成が図られたものの、90年代のグローバル化・ファスト化の中で外来企業の撤退と域内企業の退場が相次いだこと、ただし現在残存する少数企業の中に、ファスト化への適用と脱ファスト化の模索があることが明らかになった。 なお関連成果については、今年度学会シンポでのコメンテーターとしての発表とともに、翌年度の学会発表で紹介する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に立案した当初計画では、国内中核産地と周辺産地のファスト化の影響や、脱ファスト化の動向を比較分析し、最終年度の総括を予定していた。ところが、①調査対象の周辺産地について、現状分析のみならず歴史分析の必要が生じ、後者の作業に予想以上に時間を要していること、②年度末における新型コロナウイルス感染症の拡大によって、現地調査が困難となったことから、当初予定していたスケジュールが途上に終わってしまった。そこで、研究期間の延長申請を行い、残りの作業を次年度に進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、最終年度として、国内中核産地と周辺産地のファスト化の影響、脱ファスト化の動向を比較分析に着手し、国内での全体像を解明する。あわせて、最終年度であることから、学会・研究会での報告や研究論文・成果報告の公表を進め、脱ファスト化企業の政策的課題を明示していきたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、年度末に予定していた現地調査が困難となり、調査旅費や人件費等での予算執行が困難となった。次年度は当初予定の計画遂行のために、予算を執行する予定である。
|