2022年度は、引き続きコロナ禍の影響で十分な現地調査が実施できなかったが、代わりに国会図書館やオーテピア高知図書館、アパレル関連の企業・業界団体等での調査・資料収集ならびに収集資料の分析とリスト化・データベース化を図った。 その上で、本研究のテーマであるグローバル化・ファスト化で疲弊する地域産業の実態分析と、それに抗して打開策を探る企業・団体の方向性の析出、近年懸念されている人手不足と外国人労働力(技能実習生)の動員と限界についての検討、さらには国・地域レベルでの産業政策や社会政策への示唆を得るための取り組みを中心に、研究の総括を試みた。 また、そうした成果公表の一環として、高知大学学系プロジェクトである共同研究「高知に関する人文学・社会科学の拠点づくり」(代表:岩佐光広)へ参画し、それと連動する形で、本研究の成果公表を準備した。『高知スタディーズ1:「越境する視点」から地域にアプローチする手法を学ぶ(仮)』高知新聞企業、近刊で、地域経済学の視点から調査方法論を扱った章の中で、本研究で明らかにしたグローバル化・ファスト化と地域産業の歴史的変貌と下からの企業展開を提示した。あわせて、本研究で実施した調査方法論や研究史上の位置関係も紹介した。 さらに、今後の展開として、①グローバル化・ファスト化に伴う国内産地の空洞化と海外生産現場の行き詰まりを背景に注目されている国内製造回帰との矛盾・軋轢の解明、②ファスト化のオルタナティブとしてのエシカル化の実態把握、③グローバル化・ファスト化対応としての外国人労働力依存の産地構造の限界と持続可能な労働力構造の解明、④脱ファスト化に寄与する産業政策等、本研究を通じて得られた知見に基づく総括的な成果公表を進めていきたい。
|