研究課題/領域番号 |
17K03884
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
長瀬 勝彦 東京都立大学, 経営学研究科, 教授 (70237519)
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研究分担者 |
松井 亮太 山梨県立大学, 国際政策学部, 講師 (20897441)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 計画錯誤 / 意思決定 / 計画 / 実行 |
研究実績の概要 |
計画と成果との関係についての先行研究は、計画が成果に正の影響を及ぼすという結果を得たものもあれば逆に負の影響を見出した者もあり、いくぶん錯綜している。われわれは高い成果を目指して計画を立てたときの計画時間(目標達成のための作業にどれだけの時間を費やす計画であるか)、計画の詳細さ(記述された計画の文字数)、そして計画の策定の早さの3つに着目して、それらと成果との関係などについて研究をおこなった。大学の学部の「意思決定論」の授業において、2週間後に予定されていた期末試験のための勉強計画について翌日の締め切り時刻までに所定の質問に回答することを受講生に求めた。成果の尺度は当該科目の最終得点を充てた。共分散構造分析の結果は、計画時間、計画の詳細さ、計画策定の早さの三者間の相関関係については、計画時間と計画文字数の間だけに有意な正の相関があった(r=0.189, p=0.027)。三者のそれぞれが成果におよぼす影響については、計画時間から成果への標準化パス係数は0.111、有意確率は0.15で、正の影響がある可能性があるものの有意な水準には及ばなかった。計画文字数から成果への標準化パス係数は0.175で,有意確率は0.024(5%水準で有意)であった。計画が詳細である者ほど成果が高いことが示されたことになる。計画提出順位から成果への標準化パス係数は-0.178で、有意確率は0.02(5%水準で有意)であった。計画策定が早い者ほど成果が高いことが示されたことになる。これらの発見は計画と成果についての研究に幾分かの貢献をなし得るものであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の実証の主要部分は心理実験ないしは心理学的な調査が計画されいているが,本年度は一年を通じてコロナ禍にあり,対面で心理実験等をおこなうことが不可能であった。そこで急遽、オンラインでのデータ収集に切り替えて、ある程度の成果を得ることができた。しかし全体としては進捗は十分ではなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは計画と成果との関係に直接の因果関係を想定していたが、実際には両者の間には実行という段階があるので、実行をモデルに組み込むことを検討したい。すなわち、計画→実行→成果という関係である。また、計画と実行との間には結果的に乖離があることが多いが、それは当人に何らかの心理的な反応を引き起こすと考えられる。たとえば、未達成の目標があるとそれが心に引っかかり続けるツァイガルニク効果が知られている。計画と実行との乖離について反省したときに、それが成果に何らかの影響を及ぼすかどうかも研究の対象にしたい。本研究計画は個人に留まらず集団の計画錯誤を対象としているが、コロナ禍により集団作業が困難なため、実験等の実施の見通しがたたない。対面ではなくオンラインで集団の実験や調査ができないか、引き続き検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によって実験参加者を多数必要とする対面の心理実験がおこなえず謝金の支出が少なくなったことと、学会がオンラインとなって出張旅費の支出がなくなったことなどから、計画通りに補助金を使用できなかった。次年度も基本的には実験での謝金の支出を見込んでいるが、状況によっては他の費目への振替を検討したい。
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