研究実績の概要 |
今年度においては、平成29年度から平成31年度までの研究期間中に行った先行研究のサーベイ、理論モデルの構築、検証仮説の提起、データ分析を統合して、英文論文の執筆を行い完成した。完成した英文論文はAsia-Pacific Conference on Economics and Finance (シンガポール、2019年7月26日)、2nd International Conference on Management, Economics and Finance (ロッテルダム、2019年11月15日)の国際学会にて研究報告を行った。報告した論文の概要は次のとおりである。 本研究では東京証券取引所に上場している企業(14,047サンプル)を取り上げ、2001年から2015年までの期間について、わが国企業の確定拠出年金制度(DC)の採用について実証的に分析している。従業員数、積立不足率、負債比率、経常利益率、利益変動、企業評価、平均年齢、転職率、労働組合の有無、金融機関持株比率にあげられる財務要因と労働要因の両要因について検証した。本研究では仮説を検証するため、時間変動Coxハザードモデルによる多変量分析を行っている。その分析結果は、アメリカを代表とする先行研究の結果と大きく異なるものであった。海外では規模の小さい企業ほどDCを採用しているが、わが国では規模の大きい企業ほどDCを採用している。また、海外では労働組合が組織され活動的な企業ほどDCの採用が遅れているが、わが国では労働組合が組織されている企業ほどDC採用が進んでいるようである。本研究の結果は、確定拠出年金制度の採用において、わが国独特の要因や規制が非常に重要であることを示している。
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